猛威振るう熱波で露呈した欧州「脱炭素」の大困難 原子力と天然ガスを「持続可能」と位置づけ
現在有力とされるのは石炭火力発電の拡大だが、温室効果ガスの排出が多いために批判もある。そこでドイツ国内での天然ガスの自給率を上げる議論も活発だが、専門家の間でシェールガス開発は環境汚染リスクが高すぎるため、「問題外」とする意見も多い。
天然ガスの一種、シェールガスのドイツでの埋蔵量は膨大で世界で20番目とされている。主流となっているシェールガスの採掘方法は水圧破砕法というもので、地下のガスが含まれる岩層に大量の水を高圧で注入することで亀裂を作り、天然ガスを回収する。この水に混ぜている化学物質が地下水を汚染するリスクが指摘されているのだ。
またガスを回収する際のメタンガスによる大気汚染や、高圧水が断層に当たることによる地震発生のリスクも懸念される。実際に過去の採掘実験でドイツの住宅の壁に地震でひびが入ったことがあった。
原子力と天然ガスを「持続可能」という位置づけに
ロシアのウクライナ侵攻を受けて、EUは5月、2030年までにロシア産化石燃料からの脱却を目指す「リパワーEU」計画の詳細を公表した。その柱は「省エネルギー」「再生可能エネルギーへの移行の加速」「エネルギー供給の多角化」の3つだ。
その後も脱ロシアに向けた動きは進んでおり、省エネでは7月26日のEUエネルギー相会合で、加盟各国が天然ガス消費量を自主的に15%削減することで合意した。冬季までにガス備蓄量を増やす狙いもあり、8月~来年3月のガス需要を過去5年の平均値から15%減らす削減目標を立てた。
また、よりクリーンなエネルギーへの転換ということでは、欧州議会が7月、持続可能な経済活動であるかどうかを分類する基準である「EUタクソノミー」に、原子力と天然ガスを条件つきで追加する欧州委員会の提案を承認した。
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