固定残業代含む月給50万円、こんな求人アリ? 労働者の盲点?こんな表記には注意しよう
――この制度は、法律で認められているのでしょうか?
積極的にこの制度を認める法律の規定はありませんが、判例では認められているものもあります。以下が、判例が示す条件です。
あらかじめ決められた時間について、残業代を固定すること自体は「違法」とはいえません。しかし、その決めた時間を上回る仕事を労働者が行っている場合は、その時間分についての残業代を、法律にしたがって支払う必要があるということです。
ルールが守られていない現実
――しかし、会社としては、残業代を一定額以上払わないようにするために「固定」にしている場合が多いのではないでしょうか。
そうですね。正直なところ、この判例が示したルールは守られていないというのが現実です。そもそも、使用者と労働者の間で、条件1の内容について、合意がない場合がほとんでしょう。判例が示した基準を守ろうとすれば、結局、企業は労働者の働いた時間を正確に管理する必要がありますし、そもそも正しい運用に従うなら、「固定残業代」制度を用いるメリットはあまり大きくないのです。
しかし、このルールに従わず、働いた時間にかかわらず残業代を少なめに固定するのは、明確に法律違反です。労働者が働いた時間分の賃金を、使用者が支払わないことは「6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金」に問われる立派な犯罪行為でもあります。
――実際には、働く人の側も「固定残業代」という制度を理解していないことで、「適正な残業代が支払われなくても仕方がない」と考えている人が多いように思います。
「固定残業代」という名称は、あたかも「何時間働いても残業代を一定にする」ものであるという誤解を与えがちで、そういう気持ちになってしまう人が多いという現実はわかります。残念ながら、この制度は、企業の「残業代逃れ」の手口として、今、最も使われていると言っても過言ではないでしょう。
しかし、先ほども述べた通り、これはあくまで「あらかじめ決めた時間について、残業代を定額で支払うことを決めておく」というものです。実際に働いた時間分の残業代を請求することは可能ですから、言葉のイメージに惑わされないでほしいと思います。