北陸新幹線延伸「終点」、敦賀の意外な生き残り策 「在来線と乗り換え」を活性化につなげられるか

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念頭にあったのは、今年で東北新幹線開業20周年を迎える青森県八戸市だ。同市は開業を端緒に斬新なまちづくりを展開し、2016年12月には「本のまち八戸」施策の拠点施設として、市が経営する書店「八戸ブックセンター」を開設した。財政面での議論はあるものの、ブックセンターは市民には好意的に迎えられ、まちのブランド力のアップにもつながっているようだ。

「ちえなみき」のパース
「ちえなみき」の完成イメージ(敦賀市提供)

八戸市の事例を参考に、「ちえなみき」も民業圧迫にならないよう、売れ筋のベストセラーやコミック、雑誌は扱わない。「書棚を眺める」「手に取って選ぶ」「買う」、そして「本を通した地域コミュニティ活動」といった体験を通して、「リアル書店のすごさ」を浸透させたい、という。

もはや成り立たない「方程式」

「本」と新幹線開業対策の間には一見、大きな距離があるように見える。しかし、「文化」というキーワードは、中長期的には観光以上に、地域の経済活動につながることがある。

例えば、ヤフーは八戸市に従業員約200人を配置する拠点を置き、そのオフィスは八戸ブックセンターと同じビルに入居している。同社サイトには「階下に市が運営する書店がありますので、情報や知識の収集には申し分のない環境」と記載がある。

ヤフーが八戸市に拠点を置いた背景はいくつか想定されるが、新幹線開業が一つの契機と、地元では認識が一致している。

敦賀市近辺には気比神宮や気比松原といった観光スポットがあるとはいえ、乗換駅という敦賀駅の性格と相まって、金沢エリアのように新幹線開業で観光客が急増するかどうかは見定めがたい。何より、新幹線開業で急増した観光客は、2年程度で減少する例が目立つ。

コロナ禍による社会的、経済的な変化と相まって、これまでの開業事例の「方程式」はもはや成り立たない。「本」と市民の暮らし、そして観光スポットをはじめとする地元の地域資源をどう組み合わせて、新たなモデルを構築するか。

敦賀駅と敦賀湾
東側からの北陸新幹線敦賀駅の遠景。奥は敦賀湾(筆者撮影)
在来線と新幹線の高架
敦賀駅から西の車両基地へ延びる北陸新幹線(筆者撮影)
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