北陸新幹線延伸「終点」、敦賀の意外な生き残り策 「在来線と乗り換え」を活性化につなげられるか

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「otta」には、本を起点としたまちづくりの拠点となる知育・啓発施設「ちえなみき」、長屋状の飲食店舗「食の発信拠点」、さらに9階建て131室の「ホテルグランビナリオTSURUGA」が、広場を取り囲んで立地する。

オッタの完成イメージ
「otta」完成予想図。左手がオルパーク、中央が「ちえなみき」、奥が立体駐車場、手前が「食の発信拠点」(敦賀市提供)

市によると、最大のポイントは「官民連携」の制度設計そのものだという。どんな施設をどんなコンセプトで展開しても、財政的、制度的に持続困難では意味がない。先行開業事例を検討したうえで、小規模な地方都市の民間事業者のリスクを軽減しつつ、開発エリアのイメージコントロールを可能にし、さらにシビックプライドの実現を目指した。

その結果、「駅前の市有地を民間事業者に有償で貸し出すとともに、その土地の借地料等を原資に、民間が整備した施設の一画を市がテナントとして借り受ける」という手法を採用した。

そのテナントが「ちえなみき」だ。維持管理費には、一連の駅前開発事業で増額された固定資産税を充てるという。

「本」の持つ集客力に注目

それにしても、なぜ、「本」なのか。発想の原点は「『本』の持つ集客力と市民の居場所づくり」という。

「ちえなみき」の工事現場
知育・啓発施設「ちえなみき」(左)と今秋オープンするビジネスホテル(筆者撮影)

職員が足で稼ぎ、先行地域での官民連携の成功事例と失敗事例を調査した。さらに、市民フォーラムや子育て世代との意見交換会で市民ニーズの把握に努めた。

これらの結果を分析し、本を「知的情報のインフラ」ととらえ、図書館以外の多様な読書環境を提供する営みを「知への投資」と位置づけた。新幹線開業対策で重視される「効果」の軸足を、観光と並んで、「地域づくり」や「人づくり」に据えた格好だ。プロポーザルの結果、丸善雄松堂グループが指定管理者として運営を担うことになった。

「ちえなみき」の名には、本との出会いで生まれる「知恵」や、空間コンセプト「World Tree」(世界樹)に基づく枝のような本棚を表現した「千枝」「並木」「幹」「木」、古代からの港の歴史を持つ敦賀の「波」「千重波」などの意味を込めているという。

北陸新幹線敦賀延伸の看板
オルパークに掲げられたパネル(筆者撮影)
開通まであと何日
オルパーク内に地元の高校が開設したカウントダウン・ボード(筆者撮影)
次ページ新幹線開業20周年の八戸市を参考に
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