年金減額!マクロスライドがついに始動 将来世代の給付改善はできるのか
マクロ経済スライドは2004年の制度改正で導入されたもので、公的年金に対する発想の転換を国民に求めるパラダイムシフトそのものだ。世界最高の少子高齢化で年金財政が厳しくなり、負担増が止まらなくなることを避けるため、負担(収入)の上限を先に決めて、そのパイの中で給付を調整するスキームに切り替えた。
現在の給付削減が将来世代の給付改善につながる
具体的には、保険料率を18.3%(厚生年金の場合)に固定したうえで、約100年間の収入総額をまず決定。これと約100年間の給付総額が必ず一致するように、受給者1人当たりの給付水準を自動的に調整していく仕組みを導入した。
約100年間のパイが決まっている中で、マクロ経済スライドを早急に実施していけば、それによって余った給付部分を将来の高齢世代に回すことができる。図のように、現在の高齢世代の給付削減が、将来の高齢世代の給付底上げにつながるという、トレードオフの関係が成立しているのだ。
少子高齢化を受け、年金収支バランスの確保を最優先した現行制度では、「将来世代の給付底上げをいかに行うか」という問いこそが、年金改革案の柱となる。
16年には再び封印される可能性が高い
もっとも、マクロ経済スライドにも、まだ大きな課題が残されている。
「今年は初めて実施できるが、2016年には再びマクロ経済スライドをフルに発動できないかもしれない」。ある厚生労働省関係者はそう漏らす。
というのも、マクロ経済スライドは年金の名目額の減少を回避するので、デフレ下では実施しない法制度になっているからだ。2004年度から10年余り発動されなかったのは、そのためである。
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