リーダーなら身に付けたい「トラブル対処」のコツ 感情を理性でコントロールし、表に出さない

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「冷静な頭で、激高しているところを演じる」ことが可能であればやってみていただければと思いますが、私は私生活で子どもたちに協力してもらい(?)何度も試してみましたが、やはり行動と感情は双方向で影響を与え合います。

演じていると思ってもだんだん気分が盛り上がって、まさに「怒り心頭に発する」状態になり、冷静さを失ってしまいます。そして目的を達成できません。

目的達成のためには、感情を理性でコントロールし、表に出さないようにするのです。

トラブル報告にはまず感謝を伝える

メンバーがトラブルの一報をもってあなたのところに駆け込んできたら、まず「ありがとう」と言うようにしてください。これがあなたが現場の状況を察知するための、第1の手段です。

この手の報告は不愉快なことが普通ですし、なかには報告者本人の失敗や怠惰であったりすることもありますが、決してその場で責めてはいけません。

本人は現場で何とか問題を解決しようとしたけれど、なんともならないから報告、連絡、相談にきています。強く責められる自分を想像すると、なんとかぎりぎりまで踏ん張ろうとしてしまう。でもそうなると手遅れになるから報告にきているのです。

「相談をもちかけることについては、あのリーダーは責めない」とわかると、メンバーはあなたに相談しやすくなります。当然、相談の内容自体は、ありがたいものではないはずです。にもかかわらず、なぜ「ありがとう」と言うかというと、情報をもってきてくれたことへの感謝であり、その場で爆発してしまわないよう、自制のための「ありがとう」でもあるのです。

ここに1つ加えたいのが、駆け込んできた人に対して「解決策を考えてからもってこい!」という対応をしてはならないということです。なぜなら現場で解決策を考えているうちに、解決できないところまで状況が進んでしまうことがあるからです。

とはいえ、解決策は現場にあるのもまた真実。まずは一報を「ありがとう」と受け取り、その時点で可能な情報収集をしたあと、「この方向で解決策を考えてもらえますか?」と、次のステップに向けた作業依頼をするのがいいと思います。

リーダーはクライアントや他チームとのトラブル交渉のときは、必ずチームの前面に立ち、「最終ラインは自分が守る」という意識をもつことが大切です。

たとえ専門性が高すぎて、すべての内容に精通していなかったとしても、また、それが前任者の残した負の遺産であったとしても同じです。

そしてこのときメンバーには、仕事を部分的に任せるとか、支援を受けることはあったとしても、逃げているように見えることは絶対に避けなければなりません。

私自身も他チームとの交渉になったときは、情報収集や資料作成などの作業をメンバーに任せることはありますが、代わりに自分は、チーム外からの非難や追及など、メンバーの作業を妨げるものを吸収することに全力を注ぎます。

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