朝ドラは、もともと高齢者の女性視聴者がついている枠に、若めの女性視聴者を取り込むということに成功しました。つまり同じ女性ターゲットであることは変わらないわけです。
ところが、今回は男性枠に女性を足そうとして、両方に満足してもらえるようなドラマにしたいと考えた。ここに無理がありました。
実際、「花燃ゆ」についても、番宣やキャッチコピーにかなりの拒否反応を示した固定客がいました。
そうなると、思いっきり女性ターゲットにするわけにもいかず、固定客を満足させるような「史実に忠実な大河ドラマ」へと軌道修正されていくことになります。つまり、当初、狙っていたはずの「花より男子」のようなフィクションドラマができなくなってしまうのです。
歴史を忠実に描いていいのは、信長クラス
歴史を忠実に描こうとするとどうなるか。ドラマが教科書のようになります。史実を追うのに精いっぱい。歴史番組をドラマで再現したような内容になるのはそのためです。
このフォーマットがはまるのは、「織田信長」「豊臣秀吉」「徳川家康」など、本人が激動の人生を生きて、なおかつ、記録がたくさん残っている有名人のみ。
ところが毎回、「織田信長」ばかりをやるわけにはいきません。そこでマイナー主人公を発掘することとなりますが、結局、記録が少ないので、周りの人たちばかりを描くことになる。特に女性は、ほとんど記録が残っていないので、教科書ドラマの主人公にはなりえないのです。
昨今の大河ドラマを分析してみると、視聴率を上げようと、①新たな女性視聴者への訴求、②かつての大河ファンへの訴求――の両方に取り組んでいるのが、とてもよくわかりますが、残念ながら、「史実の壁」が立ちふさがり、負のスパイラルに陥っているように見えます。
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