中国で、鉄鉱石の調達と海外鉄山の権益確保を担う新たな国策企業の設立準備が進んでいることがわかった。財新記者の取材に対し、事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。
新会社は(中国の鉄鋼メーカーなどに代わって)市場から鉄鉱石を集中調達するとともに、鉱山開発への投資も行う。関係者の証言によれば、設立準備は2020年半ばから始まり、今年に入って経営幹部の一部の顔ぶれが固まるなど実質的なスタートを切っている。
その経営トップには、国有アルミ大手の中国鋁業集団(チャイナルコ)の董事長(会長に相当)を2022年7月まで務めた姚林氏の就任が有力視されている。同氏は2021年後半に新会社の準備チームのトップに任命され、約1年後に中国鋁業集団の董事長職を辞した。このことは、正式開業が近づいたサインと受け止められている。
新国策企業の株主リストや出資比率については、まだ明らかになっていない。事情に詳しい関係者によれば、新会社が国有鉄鋼メーカーや鉄鋼商社の調達ニーズをとりまとめ、対外交渉窓口を一本化することにより、国際市場での交渉力を高め、鉄鉱石のより安定した確保を図るという。
資源大手4社の寡占に対峙できるか
財新記者の取材によれば、現時点では中国の鉄鋼最大手の中国宝武鋼鉄集団、同7位の鞍鋼集団、同9位の首鋼集団、非鉄金属最大手の中国五鉱集団などが、新会社のプラットフォームを通じた調達に参加する見込みだ。
中国は世界最大の鉄鋼生産国であり、2021年の粗鋼生産量は全世界の52.9%を占めた。しかし鉄鋼業界では長年、資源確保に対する関心が(生産拡大や技術の近代化などに比べて)相対的に低かったことや、乱立した鉄鋼メーカーの整理統合が遅れたことなどから、業界全体の経営効率が慢性的に低い状態が続いている。
一方、中国が海外から輸入している鉄鉱石は英豪資源大手のリオティント、BHPグループ、ブラジルのヴァーレ、オーストラリアのフォーテスキュー・メタルズ・グループの「ビッグ・フォー」による寡占状態になっている。
これら4社は全世界の鉄鉱石生産量の約半分、鉄鉱石貿易の約7割を押さえており、国際市場で圧倒的な優位に立つ。それに対峙できる交渉力を身につけることが、新国策企業設立の最大の狙いと言えそうだ。
(財新記者:羅国平)
※原文の配信は7月18日
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