亜米利加ニモ負ケズ アーサー・ビナード著
「越境文学」を代表する作家によるエッセイ集で、言語、文学、風物、社会から国民性に至るまで、軽妙な筆致でつづられた日米中心の比較文化論。日本語を自家薬籠中のものとした著者ならではの着眼とうんちくによって、ウィットと詩情を交えながらの厳しくも柔らかな批評の世界が広がる。日本と英米の小説や詩などが具体的に比較されることで、原作品の特徴と国民性がより浮き彫りとなる事例の数々も面白い。
母国に愛着を感じつつもその外交政策が犯した過ちには容赦がないし、日本が古き良きものを捨てアメリカ型合理主義社会へと変容していくことへの疑問など、文明批評としても鋭い。とはいえ、視点の温かさこそが本書の身上で、随所でクスリとさせられるレトリックとユーモア感覚は卓抜である。「日本語」と「英語」の言葉の海に遊びながら、物事をしっかり見つめるためのヒントがそこにはある。書名は宮沢賢治の「雨ニモ負ケズ」から。(純)
日本経済新聞出版社 1785円
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