「余命半年」でも1年以上生きる男性が受けた治療 がん終末期ではいかに痛みをとるかがカギに

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自分が感じている痛みを人に説明するのは、意外と難しいものです。しかし、痛みの種類がわからなければ、薬を処方できません。

どんな痛みなのかによって、処方する薬の種類や量が変わってくるからです。それだけに、患者さんの言葉をいかに引き出し、それを適切な医療用語に変換して、どう薬を調整していくかが、緩和ケアに携わる医師の力量が問われるところです。

鎮痛薬の皮下注射で使われているPCA(自己調節鎮痛法)ポンプ。痛みが強くなったら、患者がボタンを押して鎮痛薬を追加投与する(写真:筆者撮影)

例えば、患者さんが「ずっと痛い」と言う場合、同じ強さの痛みがずっと続いているのか、それとも痛みに波があるのかによっても、薬の選択が変わってきます。なかには麻痺することを「痛い」と表現する人もいるので、質問を重ねて「痛い」の中身をじっくりと探っていきます。

人生で一番の痛みを10として考えてみる

「自分が今までの人生で感じた最大の痛みを10と設定した場合、今の痛みはどれくらいですか?」

これは、医師が患者さんに痛みの強さを探るときの聞き方です。ここでいう痛みの強さは、本人の感覚で問題ありません。大事なのは、それが正確な数字であることよりも、処方する薬によって、どれくらい痛みの強さが変わったかを知ること。これにより、薬がどれだけ効いたかがわかります。

このようにAさんにも「どう痛むのか」「薬によってどう痛みが変わったか」について話を聞くことを繰り返しました。

日本緩和医療学会「がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン(2010年版)」から
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