「肉の生食をやめられない日本人」に欠けた視点 「新鮮だから刺身で食べられる」なんてことはない
では、その数年間に何が起きたかというと、全国的にE型肝炎の罹患者が増えたのだ。1、2回食べただけなら、たまたま大丈夫ということもあるだろう。しかし、E型肝炎の潜伏期間は3〜8週間。これだけの幅があると、もはや何が原因だったか特定するのは難しい。
1999〜2005年の間に発生したE型肝炎の報告例は120人だったが、2010〜15年は全国で605人の罹患者が報告された。実に5倍以上にもなる。この数字の増加は検査キットの感度向上で可視化された面もあるが、そもそも疑わしい症状がなければ検査はされない。E型肝炎の罹患者はこの期間、実際に増加していたと考えるのが自然だ。
そして全国的に患者数が急増した2012年に報告された119人のうち、3分の1以上に当たる40人が北海道で報告されている。
北海道にE型肝炎感染者が多い背景に独特の肉食文化
実は北海道は独特の肉食文化を形成してきたエリアだ。焼肉店でもホルモンといえば、牛ホルモンよりも豚ホルモン。その豚ホルモンも少し前までは、レア気味で食べる人も多く、焼きすぎないことが通の食べ方として好まれてきた地域でもある。
2006年に発表された論文「本邦におけるE型肝炎ウイルス感染の統計学的・疫学的・ウイルス学的特徴:全国集計254例に基づく解析」でも、全国のE型肝炎感染者のうち実に半分以上の130例が北海道だった。
レア気味で食べる人が多いうえに客が自分で焼くメニューが多いので、生の豚ホルモンを触った箸で、漬物や生野菜を食べて感染するというケースも少なくなかったと考えられる。
牛や豚のレバーなど、厚生労働省が表立って「生食できません」と謳う部位にはそれなりの理由がある。食肉文化で欧米に追いつき追い越すには、「まずは安全」という体感を得ること。「食肉文化」を声高に叫ぶ前にまずはそのあたりをわれわれは認識すべきなのかもしれない。
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