アップル「伝説のデザイナー」と契約終了のワケ アップルは高額報酬と人材流出を嫌った

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

両者にコメントを求めたところ、55歳のアイブからは広報担当者を通じて断りの連絡があった。アップルもコメントしなかった。

アイブと仕事で密接な関係にあった10数人の関係者によると、アイブは2019年6月にアップルを退社する頃には、ますます巨大化するアップルの中で革新的なデザインよりも事業を回していくことに注力するクックに幻滅するようになっていた。クックがソフトウェアやサービスの増販に力を入れる中、アイブはパートタイムの役割に移行した。

2019年7月、クックはアイブのアップルに対するいら立ちを伝えた報道について「ばかげている」とし、「関係や意思決定、(実際に起こった)出来事を歪曲している」と述べた。

わずか2年ちょっとでアップルの時価総額を1.5兆ドル増加させたクックの戦略の正当性は投資家が認めるところだ。ただし一部のアナリストからは、革新的なデバイスの投入が見られないとしてクックの経営を批判する声も上がっている。

アップルのデザインチームは、COO(最高執行責任者)のジェフ・ウィリアムズが引き続き監督する。インダストリアルデザインはエバンス・ハンキーが、ソフトウェアデザインはアラン・ダイが統括。製品選択において中心的な役割を担うのは、マーケティング担当シニアバイスプレジデント、グレッグ・ジョスウィアック率いるプロダクトマーケティングチームだ。

アイブのラブフロムはAirbnb(エアビーアンドビー)やフェラーリなどの案件を継続。アイブはイギリスのチャールズ皇太子が運営する気候変動問題関連の非営利団体「持続可能な市場のためのイニシアチブ」との個人的な仕事を続ける。

スティーブ・ジョブズの最側近

ロンドン郊外で生まれ育ったアイブは1992年にアップルに入社し、デザインチームのトップに上り詰めた。1997年にスティーブ・ジョブズがアイブのチームにiMac(アイマック)のデザインを命じたとき、同社は倒産の危機にあった。丸っこく透明なこのコンピューターは当時、デスクトップ機として史上最速の売れ行きを誇った。iMacのおかげでアップルの経営は復活。アイブはジョブズに最も近い腹心となった。

次ページ「アップルを動かす力はほかの誰よりも大きい」
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事