アップル「伝説のデザイナー」と契約終了のワケ アップルは高額報酬と人材流出を嫌った
多大な影響力を持つアップルのデザイン責任者、ジョニー・アイブが2019年に同社を去ったとき、ティム・クックCEOは顧客を安心させようと、キャンディカラーのコンピューターを世に送り出したアイブは今後も長期にわたってアップルのプロジェクトに独占的に関わっていくと述べた。
しかし、状況は変わった。
契約上の合意内容を知る2人の消息筋によると、アイブとアップルは提携解消に合意した。これにより、iPhone(アイフォーン)のデザインを隅々まで決定し、近年で唯一の新しい製品カテゴリーであるApple Watch(アップルウォッチ)の開発を導いたデザイナーとアップルとの30年にわたる関係にピリオドが打たれる。
100億円超え複数年契約の「縛り」
2019年にアイブが自身のデザイン会社LoveFrom(ラブフロム)を立ち上げるためアップルを退社した際、アップルはアイブと1億ドルを超える金額で複数年契約を結んだ。この契約によりアップルはラブフロムの主要顧客になったと、合意内容に通じた情報筋は言う。
この契約はアイブにアップルが他社と競合すると見なす仕事を引き受けないという制約を課し、未来の製品開発についてアップルに報告するよう定めたものだったと情報筋は語っている。開発中の未来製品には、来年の発売が予想される拡張現実(AR)ヘッドセットなどが含まれる。
契約更新時期が近づいたここ数週間で、アップルとアイブは契約を更新しないことで合意した。消息筋によると、アップル幹部の一部はアイブに支払われている金額に疑問を唱えるとともに、デザイナーの何人かがアイブの会社に移籍したことにいら立ちを募らせていた。一方、アイブはアップルの許可を得る必要なく、ほかのクライアントの仕事を引き受ける自由を求めていたという。