若者の志願者減で「児相の事故」が減らない現状 事故の検証を感情論ではなく「数値化すべき」

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すべて数値化すれば、その報告書が根拠となり施策や現場の行動が変容します。つまり現場の職員の判断をサポートする仕組みとなるのです。しかしそれには責任を伴います。その数値に従って対応して、また重大事例が発生した場合、報告書の検証委員はその数値の作成プロトコルを裁判に呼ばれたら説明する必要があります。なので委員は行政と同様、報告書を作ったら終わりにして責任を現場とともにかぶりたくないのです。

よって支援技術については数値化して判断すべきなのに、報告書を見ると「職員の質が低い」「質の向上が必要だ」などの、これまた感情的な意見となるのです。今やデータサイエンス技術のおかげで質的研究が量的研究として再構築されていっているように、必ず質も数量化できるはずです。

つまり本当は、施設が足りない、職員が足りない、予算が足りないというのはわかっているのです。しかしそれをカモフラージュするために、熱意や情熱にすり替えてしまうのが行政であり検証委員であり、それに乗っかってしまうメディアにサイエンスリテラシーはありません。

今後皆さんが児童虐待の報告書をお読みになるときに、数値で結論を出せないものはインチキと言って差し支えないです。事件や事故の分析は必ず数値化、つまり基準化できるのです。まさに数値化すると「失敗の本質」が回避できるのです。現場の判断や対応、支援技術の過ちだったのかというミクロの視点(戦術)の失敗なのか、職員数が少なくて十分対応できない、措置先がない、法制度の不備などのマクロ政策(戦略)の不備なのか、数字で「みえる化」できるので、戦略の問題を戦術でカバーするリスクが低減します。

高校で「情報科」が開設

新しい学習指導要領で今年4月に高校で情報科が開設されました。統計学だけでなくRやPythonのプログラミングができる高校生が3年後に大学に入学してくるということです。また北海道大学や早稲田大学などのトップ校を中心に、全学生がデータサイエンス科目を学ぶという取り組みが始まっています。

一方、福祉の教員はデータサイエンスを新たに学ばず、経験論という「熱意や情熱」で学生を指導するのでしょうか? もしそうだとしたらそのような学問は先細りですし、業務が科学的ではなく感情的になりがちでハラスメント要素満載なので継続勤務率も短い状態は改善されません。この少子化が進む社会において、大切な子どもを持つ親は気づき始めています。高い学費を払って福祉に進学する意義があるのか、と。それが志願者数にも表れていると考えられます。その対策をどうすればいいか、政策評価学者としてこれから検討していきたいと思います。

和田 一郎 獨協大学国際教養学部教授

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わだ いちろう / Ichiro Wada

筑波大学大学院人間総合科学研究科(社会精神保健学)修了。博士(ヒューマン・ケア科学)。専門はデータサイエンス。社会福祉士、精神保健福祉士。人口減少社会における公共サービスの在り方、行政DXの活用や震災・疫病などの危機時における子ども等の弱者の支援におけるデータサイエンスの活用 などを研究している。

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