若者の志願者減で「児相の事故」が減らない現状 事故の検証を感情論ではなく「数値化すべき」

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児童相談所で働く現場職員は非常にストレスフルな環境で過重な労働を強いられています。児童福祉法は他の福祉領域の法案に比べ頻繁に改正しているのですが、一向に現場の職員の状況は改善されません。度重なる法改正、制度変更により現場はさらに疲弊し、異動希望率も部局内トップという自治体もあります。異動者・退職者が多く出るのは死亡事例など重大事例が起こりその職場にスポットライトが当たったときです。児童福祉法でも第一義的責任は親となっているにも関わらず、所長や首長が頭を下げるのです。自分たちの対応が悪かったからと謝るのです。

同様に虐待などを受けた子どもが入る施設で重大な事件が起こった場合でも、施設に力量がなかった、職員に情熱がなかったなど、つまり現場の対応が悪かったといわれます。

では、その対応がよかった、悪かったというのはどうやって決まるのでしょうか?

現場の対応をどう判断するのか?

大きな事件が起きると、死亡事例検証委員会などが立ち上がります。他領域の事故で調査分析する運輸安全委員会や食品安全委員会とは手法が異なり、特に下記について顕著です。

1)事故を起こした自治体が自由に委員を選定できる。よって行政にとって耳が痛いような事実を突きつける、研究力があるような人は選ばれません。

2)事故を今後防止するための改善案などでお金がかかること(人員増、児相増員、子どもへのケア予算増額)を提言する人は選定されません。

3)客観的、具体的な分析より抽象的・概念的意見を言って責任をうやむやにする人が選ばれます。特に制度や組織の問題を職員の熱意や情熱に転嫁する人が好まれます。

4)報告書を書いた後は忘れてくれるような委員が選ばれます。何年もウォッチして、報告書の提言を実行していないではないかと主張したり分析する人は嫌われます。

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