英高速鉄道受注に進展 日立が見据える「次」
スッタモンダはあったが、日立製作所は期待の大型商談を失わずに済みそうだ。英国運輸省は3月1日、英国の都市間高速鉄道の車両置き換え計画(IEP)で、日立が主導する特別目的会社アジリティ・トレインズとの交渉を再開すると発表した。
IEPは、運行開始から30年以上経過した英国の幹線高速鉄道を更新する計画。2009年2月にアジリティが優先交渉権を獲得していた。当初は総事業費75億ポンド(約1兆円)の大型案件だったが、金融危機による資金調達環境の悪化などで交渉が長期化。10年2月には正式契約直前までこぎ着けたが、英総選挙への影響回避のため交渉は凍結された。その後、英政権交代と歳出削減の影響で、計画の再評価が行われてきた。
今回、総事業費は45億ポンドと当初計画の6割に縮小。しかし最悪の場合、計画白紙や日立の優先交渉権破棄もありえただけに、「英国政府の決断に深く敬意を表する」との日立・中西宏明社長コメントには安堵がにじむ。
IEPをめぐっては、インフラ輸出に力を入れる日本政府も交渉再開を働きかけてきた。「早期に再開されるよう、関係閣僚が一体となって英政府に要請してきただけに、今回の発表は誠に喜ばしい」(海江田万里経済産業相声明)とは自画自賛めいているが、国際協力銀行(JBIC)を通じた融資制度などが後押しになった面はあるだろう。
正念場はこれから
もっとも日立にとってはこれからが正念場だ。
まずは最終的な条件交渉が残っている。英政府が再検討している間も日立側は同政府の要望に応じた改善案を提案しており、そうした姿勢が評価されたことを考えると年内に正式契約となる可能性は高い。ただ、外部環境の変化など最後まで気を抜けないのは、1年前に学んだとおりだ。