観光客誘致は「名物アピール」だけではダメ

小霜和也、本田哲也が語る広告の今(下)

小霜:昨晩、焼鳥屋さんに行ったら、「マッサンハイボール」なるものがメニューにあったんですよ(笑)。面白がって思わずオーダーしたのですが、きっとドラマが終わったら売れなくなるんだろうなと……。「今売れればいい」を目指すのであればそれもアリですが、『マッサン』を入り口にウイスキーの歴史をちゃんと伝えることが目的であれば、短期的な売り上げは指標になりません。ですから、何を目指すかによって指標がかわってくる、と。

本田:それも、ある意味「商品と世間をつなげている」のかもしれませんが、今日のテーマとは少し異なりますね。PRでいうと一過性のブームに便乗するというよりは、たとえば『半沢直樹』の「倍返し」が受け入れられている今の社会って何だろうと捉えたときに、世間全体の気分感があるんだよねと分析して活かす。……そんな深さがあります。

地方自治体は、どのように自前化するか

小霜和也(こしも かずや)●1962年兵庫県西宮市生まれ。1986年東京大学法学部卒業。同年博報堂入社、コピーライター配属。1998 年退社。2014年現在、株式会社小霜オフィス no problem LLC. 代表。広告賞受賞多数。近著に『ここらで広告コピーの本当の話をします。』(宣伝会議)がある

小霜:ではここで新たなお題を一つ。「地方自治体でどのように自前化するか」について話しましょう。前半でも申したように、クリエイティブとは商品と生活者の新しい関係作りだと思っています。そういう意味で自治体と生活者の新しい関係作りが今まさに問われていて、クリエイティブの視点がすごく生かされると思うんですよ。

こないだNHKの番組で観たんですけど今、「ふるさと納税」がアツいですよね。もともとは東京から地方にお金を移そうというのが狙いで、ふるさと納税をする(地方自治体に寄付をする)とその土地の特産品が御礼として返ってくるという制度です。寄付金は税金控除されるため大変お得なので、人気があるのですが、寄付金を集めるために自治体同士で御礼合戦になっているというのです。あの町が寄付金の「2割」お返しをするなら、うちは3割にしよう!という競争です。

本田:せっかく商品と生活者の間に新しい関係ができて動き出したのに、「これ買ったらオマケがついてきます」みたいな身も蓋もないマーケットプロモーションになってはもったいない。「もらったらお返し」みたいな際限ない、昔ながらの関係性が出てしまったのでしょうか……。

小霜:ただこの状況の中、あえて物で御礼はせず政策を伝えようとする自治体もあると。「集まった寄付金はここに役立てます」という政策をしっかり伝えて共鳴してくれた人を現地に招いたり、希望者がいれば移住を促したりすることも。人を呼べば地場産業の活性化にもつながりますし、大変クリエイティブだと思いますね。

本田:PRの発想でいうと、東京にいる人と地方との関係自体がどうなっているのかというのが関心のポイントだと思います。各自治体に様々な御礼があり、これは大変ユニークな関係性ですよね。その場合、「活性化していく仕組み」が商品になるわけですよね。

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