和食=健康食と「盲信」する人が見落とす重大事実 健康長寿にはカロリー制限も断酒も必要ない

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ところで、糖尿病の患者さんに対してカロリー制限という「古い指導法」を行っている医療機関では、アルコールを禁止します。なぜなら、アルコールはカロリーが高いからです。

しかし、ほとんどのお酒好きの患者さんは、人生の楽しみを奪われて辛い思いをしているにもかかわらず、一向に血糖値を下げられません。それもそのはず、アルコールを我慢する代わりに、と食後にフルーツやお菓子などを口にしてしまっているケースが多いからです。

血糖値を下げるために断酒? ムダな努力です

明言しておきますが、アルコール自体は血糖値を上げません。ビールや日本酒、紹興酒などのお酒は、糖質を多く含むため血糖値を上げます。でもそれは、糖質が原因なのであって、アルコールが原因ではありません。だから、最近スーパーやコンビニで見かける「糖質ゼロ」の発泡酒では、血糖値はけっして上がりません。それどころか、アルコールは血糖値を下げるのです。

私が出席した学会でも、このような報告がありました。低血糖に陥って救急車で運ばれた糖尿病患者の3割は、お酒が原因だったというのです。

ふだんから「アルコールはカロリーが高いから控えましょう」と間違った指導をされている患者さんたちは、少しでも摂取カロリーを減らすために食べ物を控え、空腹状態でアルコールを飲み、その結果、危険な域まで血糖値を下げてしまいます。

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もちろんアルコールは、飲み過ぎれば健康を害します。しかし、糖尿病や高血糖病を防ぎ、治すために辛い断酒を続けることに意味はありません。

ウイスキーや焼酎といった蒸留酒は一切、血糖値を上げません。糖質ゼロの発泡酒も上げません。辛口の白ワインは、やせる効果があるとわかっています。赤ワインもポリフェノールなどの健康にいい成分が入っていますからおすすめできます。私は毎晩、辛口の白ワインを飲んでいます。

食事の内容についても、お酒を飲む人のほうが実は有利だと考えます。お刺身、枝豆、冷や奴、焼き鳥など、お酒のつまみには糖質が少ないメニューがたくさんあるからです。こうしたものを食べながら焼酎、ワイン、ハイボールなどを飲んでいる分には、血糖値はあまり上がりません。一方で、下戸の人はどうしても炭水化物やデザートを欲しがります。

間違えないでほしいのですが、血糖値を下げるために必要なのは「糖質を減らす」食習慣だけ。カロリーを控える必要も、大好きなお酒をやめる必要もないのです。

牧田 善二 医学博士・AGE牧田クリニック院長

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まきた ぜんじ / Zenji Makita

AGE牧田クリニック院長。糖尿病専門医。医学博士。1979年、北海道大学医学部卒業。ニューヨークのロックフェラー大学医生化学講座などで、糖尿病合併症の原因として注目されているAGEの研究を約5年間行う。1996年より北海道大学医学部講師。2000年より久留米大学医学部教授。2003年より、糖尿病をはじめとする生活習慣病、腎臓病治療のための「AGE牧田クリニック」を東京・銀座で開業し、延べ20万人以上の患者を診ている。

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