「あおり運転」2輪車や大型車から見た乗用車の姿 混合交通では他車とのコミュニケーションが重要

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筆者は過去に大型商用車の開発に従事していたが、その経験からすると、大型車は車体が大きいため、後続車からすると前方視界が遮られることから同じく接近されやすい。また、車両と積荷を含めたGVW値で25tにもなる大型トラックは重いため乗用車ほどの加速力が生み出せない。

一転、ブレーキ力は強力だ。乾燥したアスファルト路であり、空荷(GVWで12t前後)であれば減速度にして0.8程度(乗用車の急ブレーキとほぼ同一)は出せるし、大型観光バス(車両+乗員乗客合わせ16tほど)でも同じく力強く止まる性能をもっている。

しかし、荷物を積んでいれば荷崩れ抑制の問題から、乗客が乗っていれば車内事故抑制の観点から、それぞれ急ブレーキが踏めないのが実情である。

その大型トラックや大型観光バスから、あおり運転を受けたという声を耳にする。確かに自車背後に背の高い大型車が迫ってくれば、ゆっくり近づいてきたとしても威圧感があり怖いと感じるドライバーもいるだろう。

大型車は車体が大きいことから前方の交通状況がわかりづらい(写真:筆者提供)

ただ、乗用車と同じ感覚で大型車の前に割り込めば、先の理由から強いブレーキが掛けにくい状況にあるため、どうしても割り込んだ車両との車間距離が短くなる。

このとき、大型車を運転するプロドライバーとしても接触や追突はなんとしても避けたいから、通常時よりも強めのブレーキ(減速度にして0.4~0.6程度)を掛けるが、割り込んだ車両との速度差が少ない場合は一時的とはいえ、車間距離が詰まってしまう。

降板路から登坂路へさしかかる場所も注意

別の理由から大型車からあおり運転を受けたとする声も聞く。それはサグ部で起こりやすい。サグ部とは、降坂路から登坂路へさしかかる場所をさし、ここを基点に車両の速度が落ちやすい。

下り坂から上り坂への転換点がサグ部と呼ばれ、速度が落ちやすく渋滞の基点となることがある(写真:筆者提供)

大型車の場合、先を見越した予測運転が安全で、燃費数値のいい運転になることから、サグ部を見越して登坂路にさしかかる前にアクセルを少しだけ踏み込み、速度低下を抑制している(これを波状運転の抑制と言う)。物流業界において燃費数値の悪化は収入の減少を意味するし、運送会社によってはSDGsの観点から波状運転抑制を推奨している。

このサグ部にさしかかった際、前走車が乗用車で速度の低下に気がつかないとどうなるのか。結果はおわかりのとおり、あおり運転の構図になってしまう。ここでも双方に悪気はないが、前走車と後続の大型車ドライバーとのコミュニケーションが図れないため、“疑似的なあおり/あおられ運転”が発生してしまうのだ。

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