車がない!国産/輸入車「新車納期」の切迫度 納期6カ月も当たり前になった自動車販売の今

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販売の中止は当然、クルマの売れ行きにも大きな影響を与える。ユーザーが購入を希望したとき、「改良を行うために、今は販売を中止している。改良の時期や改良後の価格などは不明」と返答したのでは、他メーカーのライバル車に乗り換えられる心配が生じる。

この対策として、メーカーの商品企画担当者は「今後はフルモデルチェンジなど、新型車の予約受注を前倒しして開始する可能性が高い。販売の中止期間をなるべく短く抑えるためだ」という。例えばマツダからは、「CX-60」について次のような説明を受けた。

新世代商品群の第1弾として発表された「CX-60」(写真:マツダ)

「CX-60の販売開始は2022年9月だが、予約受注は6月24日から開始した。理由は『CX-5』の納期遅延だ。お客様のCX-5が納車された直後に、新型になったCX-60が発売されたら、満足度を下げてしまう。そこでCX-60の受注開始を前倒しした。今ならCX-5とCX-60を比べて、納得のうえで選んでいただける」

実際のところ、販売店では6月24日ではなく、4月下旬から価格を明らかにして水面下の受注を開始していた。たしかにCX-5の納期遅延に向けた対策とも受け取れるが、販売店の思惑は複雑だ。

実車なしで販売/購入する難しさ

「CX-60の受注を開始した時点では、販売店のスタッフもCX-60の実車を見たことがなかった。しかも、CX-60は新開発のFR(後輪駆動)プラットフォームと直列6気筒クリーンディーゼルターボを搭載する。従来のFF(前輪駆動)と直列4気筒エンジンを採用するマツダ車からは、CX-60の運転感覚をイメージしにくい。そのためにお客様に説明するときも困惑した」

CX-60の全長はCX-5と比べて200mm近く長いが、その多くは後輪駆動と直列6気筒エンジンの搭載に伴うボンネット長の伸延に費やされた。ボディは長くても、後席の足元空間や荷室長はCX-5とほぼ同じだ。

「CX-60」とサイズや価格がオーバラップする「CX-5」(写真:マツダ)

また、ベーシックな直列4気筒2.5Lガソリンエンジン搭載車の価格は、CX-60、CX-5ともに同程度になる。そうなると、実車を使って内外装の造りや走行性能、乗り心地などを比べなければ、どちらを選ぶか判断しにくい。

受注開始の前倒しは販売の中止期間を短くできる代わりに、ユーザーと販売店に情報不足の中で契約を迫ることになる。これはCX-60に限らず、受注開始の前倒しを行うすべての車種に当てはまる功罪だ。

従って、地域に1台など特定の販売店にプロトタイプ(試作車)を展示するような、ユーザーになるべく多くの購入情報を提供する配慮が求められる。これを果たしたうえで、受注開始の前倒しをするなら、ユーザーの不満もある程度は抑えられるだろう。

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