車がない!国産/輸入車「新車納期」の切迫度 納期6カ月も当たり前になった自動車販売の今

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メルセデス・ベンツの販売店では「Aクラスはアウディ『A3』、ゴルフなどを含めてライバル車が多く、納期の遅延は競争で不利になる。またAクラスは、日本車のお客様を誘致できる戦略的な車種でもある。Aクラスの納期が長引いて売れ行きが下がると、ブランド全体の発展にもよくない影響が生じる」とコメントした。

本来なら最量販車種になるはずの「Aクラス」(写真:メルセデス・ベンツ日本)

ちなみにフォルクスワーゲンやメルセデス・ベンツをはじめとした輸入車はクルマ好きには身近な存在だが、国内で新車として売られる小型/普通乗用車に占める輸入車の比率は、10%弱に過ぎない。

日本の輸入車普及率は諸外国に比べて低く、輸入車は今でも日本車のシェアを奪って増殖する段階にある。このとき、コンパクトで安価なゴルフやAクラスが売りにくくなるのは、ユーザーを増やすうえでマイナスに作用するわけだ。

その一方で、BMWの販売店では「主力車種の『3シリーズ』なら在庫があり、仮になくても売れ筋グレードであれば3カ月程度で納車できる。SUVは少し長いが、それでも『X3』なら5カ月程度で納車可能だ」という。BMWは比較的、購入しやすそうだ。

新車購入に“積極さ”が求められるように

このように、輸入車の納期はブランドや車種によってさまざまだ。それでも各販売店が口をそろえて言うのは「今後の納期は不透明」ということ。「相応の台数が入荷して順調に販売できても、その後の輸入が途絶えてしまうこともある」という。

また、輸入車では値上げの動きも続いている。フォルクスワーゲン、アウディ、BMWミニ、ジープなどが、相次いで値上げに踏み切った。

プジョーも7月1日から値上げを実施した(写真:Stellantisジャパン)

新型コロナウイルス、ロシアのウクライナ侵攻に伴い、原材料費や輸送費が高騰している。そこに円安傾向まで加わったためのやむを得ない措置だ。今後、輸入車の値上げはさらにエスカレートするだろう。

値上げの可能性があるとすれば早めに購入したいが、前述の通り納期の遅延で納車が難しい。ユーザーとしては、なるべく早めに商談を開始して契約するしかないだろう。また、輸入車は輸送中の車両を含めて、すでに生産されたクルマのリストから選ぶことも多い。グレードやボディカラーをある程度妥協して、比較的短い期間で納車される車両を選ぶ方法もある。

販売店に希望のグレードやボディカラーをあらかじめ伝えておき、該当する車両が見つかったら連絡を入れてもらうのもよい。国産車・輸入車を問わず、新車購入では以前よりユーザーの積極性が大切になっているといえるだろう。

渡辺 陽一郎 カーライフ・ジャーナリスト

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わたなべ よういちろう / Yoichiro Watanabe

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまにケガを負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人たちの視点から、問題提起のある執筆を心掛けている。

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