アメリカ株の反転上昇がそう簡単ではないワケ 日本株も年内3万円回復は難しくなってきた

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仮に7月26~27日開催のFOMC(アメリカ連邦公開市場委員会)の利上げ幅が0.75%だった場合、8月時点である程度インフレ沈静化の兆しが見えていれば、9月FOMCの利上げ幅を0.5%に縮小することを示す可能性があるからだ。そうなれば、アメリカの長期金利が安定し、世界の株価に追い風となると期待される。

もっとも、金融引き締めの度合いが緩やかになるからと言って、株価が上昇基調に転じるかは別問題である。長期金利の安定はバリュエーション修正(PERの低下)に歯止めをかけるが、その間、企業業績の見通しが悪化すれば株価は下落する。その点、速報性に優れたアメリカ製造業PMI速報値は企業業績の悪化を想起させる結果であった。6月のヘッドラインは52.4へと4.6ポイントもの低下を記録した。すでに発表のNY連銀製造業景況指数、フィラデルフィア連銀製造業景況が共に弱い結果になっていたため、ある程度の弱さは想像できたが、それでもこの弱さは驚きであった。

当面の日経平均は2万6000~2万8000円で推移か

5月末まで続いた中国のロックダウン影響によって一時的に下押しされた可能性はあるが、高インフレによる個人消費の下押し、金融引き締めによる住宅関連需要の減退が効いたとみられる。サービス業PMIも51.6へと1.8ポイント低下するなど、インフレ退治の代償が大きいことを浮き彫りする結果であった。

先行きのアメリカ株は金融引き締めの度合いがいつピークアウトするのか、景気後退懸念がどれくらい強まるか、この2点のバランスが重要になってくる。筆者は8月のジャクソンホール講演で9月FOMCの利上げ幅縮小がアナウンスされ、そこで長期金利が安定し、株価に対する逆風が止むと予想しているが、最近のアメリカ指標は景気後退懸念をそうさせるものが増加しており、仮に金融引き締めが終了したとしても業績不安がくすぶることで、株価が基調的に上昇していくかは微妙になってきたと言わざるをえない。

そうしたなかで日経平均株価が上値を試すのは難しいだろう。国内景気の底堅さから判断して年初来安値を更新するとは考えにくいが、一方で3万円に近づく姿は想像できない。当面は2万6000円前後から~2万8000円のレンジで推移するのではないか。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

藤代 宏一 第一生命経済研究所 主席エコノミスト

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ふじしろ こういち / Koichi Fujishiro

2005年第一生命保険入社。2010年内閣府経済財政分析担当へ出向し、2年間『経済財政白書』の執筆や、月例経済報告の作成を担当。その後、第一生命保険より転籍。2018年参議院予算委員会調査室客員調査員を兼務。2015年4月主任エコノミスト、2023年4月から現職。早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA、ファイナンス専修)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)。担当は金融市場全般。

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