アメリカ株の反転上昇がそう簡単ではないワケ 日本株も年内3万円回復は難しくなってきた

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食品価格の上昇は、中・高所得者なら多少は耐えられても、低所得者には厳しい(写真:ロイター/アフロ)

日本経済は輸入物価上昇に直面しつつも、周回遅れで経済活動の正常化過程にあり、先行きも政策支援とインバウンド再開に支えられながら対面型サービス業を中心に回復が予想される。日本株を取り巻く環境として、国内経済は比較的順調と評価して良さそうだ。

実際、速報性に優れた6月PMI(企業景況感指数)はそうした見方を裏付けた。製造業PMIは52.7へと0.6ポイント低下したものの、2001年の統計開始以来の平均値50.7を上回って推移している。調査項目の内訳をみると、生産が(51.5から51.0)と新規受注(50.4から49.4)が分岐点とされる50超を維持し、雇用(51.9から52.0)も一段と水準を切り上げた。

そうした中、サプライヤー納期は短縮化し、サプライチェーン問題の緩和を示唆している。また新規輸出受注(46.2から47.3)が増加方向に転じるといった前向きな動きもみられた。生産活動は半導体不足によって自動車生産の回復が遅々としているなか、非自動車・家電向けのIT関連財(半導体製造装置、部材、電子部品)の増産傾向が一服した可能性があるいっぽうで、内需回復により国内向けが持ち直し傾向を強めているとみられる。

アメリカの「4つのインフレ要因」とは?

経産省公表の出荷内訳表によると4月までの傾向として国内向け出荷が息を吹き返しつつあることが示されていたが、こうした傾向は6月現在も続いているとみられる。そうなると夏場の日本株はアメリカの動向が重要になってくる。まずは現在のアメリカ経済を混乱に陥れているインフレの動向を整理する。アメリカのインフレの理由は大きく4つに大別できる。

1つ目は「サプライチェーン問題」だ。自動車が作れず中古車を中心に耐久消費財の価格が上がっている。2つ目は「エネルギー」。ガソリンを含め一次産品価格が上昇し広範な影響をもたらしている。3つ目は「家賃」。消費者物価の約3割を占める家賃、直近は住宅ローン金利の急上昇などから住宅販売が落ち込んでいるため、来年までには低下が予想されるが、少なくとも現在は上昇傾向を強めている。そして4つ目は、一番厄介な「賃金」である。

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