倒産した社長が粉飾決算を真実と信じ込む不思議 最も避けたい「最悪の結末」の最短ルートなのに

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粉飾決算に手を染めた経営者の末路を見てきた関係者の証言には、リアルで厳しいものがあります。

現実が見えなくなった結果、倒産に至る

「経営者は粉飾すると、現実から目をそらしてしまう。融資を受けて、一時的とはいえ窮状をしのげるから危機感がなくなるのは当然だ。根本的な問題解決に着手しないから状況は変わらず、粉飾を毎年繰り返すようになる。そこが一番怖い」(東京都港区の笠間税務会計事務所代表、笠間浩明公認会計士・税理士)

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「大抵の場合、粉飾した1つの決算書を税務署にも金融機関にも提出する。経営者はそれを正しいと思い込むようになり、本当の業績や財務状態が分からなくなる。不思議に思うかもしれないが、これが世の中で起きている粉飾経営の実態」(東京都港区の経営コンサルティング会社グラティチュード・トゥーユー、川北英貴代表)

「粉飾経営が4、5年も続けば、経営者は本来の業績や財務に対して、そもそも興味をなくしてしまう」(帝国データバンク情報部の丸山昌吾氏)

粉飾した数字が真実であるかのような錯覚に陥り、現実が見えなくなった結果、倒産に至る。そんな構図があるようです。粉飾が会社を破綻へと確実に近づける以上、粉飾の誘惑に駆られた経営者がすべきは現状を正しく把握し、浮かんだ問題の解決策や再建計画を考えること。その上で、メインバンクに相談する。愚直ですが、これに尽きます。

日経トップリーダー編集部

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