倒産した社長が粉飾決算を真実と信じ込む不思議 最も避けたい「最悪の結末」の最短ルートなのに

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粉飾決算に手を染めてしまった経営者の独白をお届けします(写真:CORA/PIXTA)
罪悪感に駆られながらも経営者が粉飾決算をやめられないのはなぜか? 倒産企業の研究から、 それがなぜ「最悪の結果」への最短ルートなのか? 
失敗の法則を引き出した『なぜ倒産 令和・粉飾編 ― 破綻18社に学ぶ失敗の法則』。倒産を30年取材してきた日経トップリーダー編集部が、帝国データバンクと東京商工リサーチの協力を得てまとめた1冊から、エッセンスをご紹介します。

本書で紹介する9つの失敗の法則のうち、編集部が筆頭に挙げたのが「失敗を隠すことが、最大の失敗」です。「粉飾7年、会社を潰した男『後悔はない』と言う訳」(6月16日配信)の続編として、粉飾倒産した元経営者の独白を基に、このセオリーをさらに深掘りします。

今回は、小売業に携わった元経営者の独白から。粉飾から倒産に至るいきさつと胸のうちを明かします。

当たり前のように粉飾したわけではない

粉飾決算を「実態とは違う数字を計上する」と定義すると、私は大きく分けて2種類の粉飾をしたことになります。
最初の粉飾は経費の後ろ倒しです。当時は粉飾と思っていませんでしたから、後ろめたさを感じませんでした。
粉飾に手を出すまでは利益がそれなりに出る小売業の会社でしたが、ある年に起きた為替変動の影響が当社を直撃しました。営業利益は黒字ぎりぎりで着地できそうだったものの、前期と比べて落ち込みがひどかった。
そうなると、やはり融資する金融機関の目が気になります。そこで経費を組み替えることで、営業利益を金融機関が納得するであろう水準に引き上げたのです。具体的には、ある職種に支払う人件費を販管費から外部経費に付け替え、それを一定期間支払わない形にするなどといった方法でした。
ただ、味をしめて翌期以降も当たり前のように粉飾したわけではありません。
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