18きっぷ越える衝撃、ドイツ「9ユーロ乗り放題」 地下鉄やバスなども含め1カ月有効、だが課題も

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9ユーロチケットの利用者が急増し混雑するベルリン中央駅(撮影:橋爪智之)
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ドイツ政府は今年6月から8月までの3カ月間、月額わずか9ユーロ(約1300円)で優等列車などを除くドイツ全土の交通機関が乗り放題となる「9ユーロチケット」を発売した。利用できるのはローカル列車、地下鉄、トラム、バス、ハンブルクおよびベルリンのフェリーなどで、ICEやICなどの都市間を結ぶ特急列車やFLIXTRAIN(フリックストレイン)など一部の民間鉄道会社、またツークシュピッツェへの登山鉄道は利用できないが、逆にそれ以外はすべて乗り放題ということになる。

ドイツ国内のどこで購入しても全国の交通機関で有効という夢のようなチケットで、券売機で手軽に買えるのも魅力だ。JR各線のローカル列車が任意の5日間乗り放題という「青春18きっぷ」に近いイメージだが、ドイツの9ユーロチケットはそれを全国の私鉄や地下鉄、バスやフェリーなどに拡大し、なおかつ1カ月間有効、しかもたった9ユーロというのだから驚きだ。さすがにインパクトが強いようで、ドイツ鉄道では6月前半だけですでに650万枚以上を販売した。

目的は「エネルギー消費抑制」

なぜ、このようなチケットが発売されることになったのか。

昨今の社会情勢はご存じの通り、ロシアによるウクライナ侵攻が徐々にドイツの市民生活へも影響を及ぼし始め、とりわけエネルギーコストの上昇は市民生活に深刻なダメージを与えている。

ドイツ政府は、まず自動車利用によるエネルギー消費を抑制するため、国民に対して公共交通機関の利用を促す目的で、ドイツ全国どこでも有効な特別割引の定額制乗車券を導入することを決めた。9 for 90(月額9ユーロ/90日間)と称されたエネルギーコスト軽減策は、公共交通機関を運行する鉄道やバスの各事業者に補助金を出し、9ユーロチケット導入によって減少する収入分を補填するもので、その予算は推定25億ユーロ(約3565億円)に達する。

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