ソニー、決算で見えた"脱エレキ"への道筋 通期営業益は一転黒字へ、株価も急騰

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縮小

これで改めてスマホ事業の縮小を明確にしたわけだが、さらに今回の数値開示で鮮明になったのが、ソニー全社の"脱エレキ路線"への転換である。

ソニーは前述のとおり、2014年11月、各事業の2017年度目標値を公表したが、カメラ事業は2017年度の売上高目標は6500億円~7000億円(今期見通しは7100億円)、テレビやオーディオを含むホームエンタテインメント&サウンド事業(HE&S)は売上高目標1兆円~1兆1000億円(同1兆2100億円)とし、いずれも減収を見込んでいた。

テレビやオーディオは、かつての収益柱。ウォークマンや薄型テレビ「ベガ」を出すまでもなく、ソニーの“顔”といえる事業だった。しかしテレビは2013年度まで 10期連続赤字が続くなど、苦境から脱せず。オーディオもスマホの台頭などで市場が縮んだ。カメラも、同じくスマホに侵食され、2013年度に188億円の営業赤字を計上するなど、低迷が続いていた。

イメージセンサー事業を強化

テレビ、カメラはともに今期、営業黒字化を見込むなど、足元で業績は改善傾向にある。それでも縮小路線に転じるのは、こうした事業の規模拡大が採算向上につながらない、昨今のエレクトロニクス製品の典型だという事情がある。

かつて事業の中心だったエレクトロニクス製品がそろって、“脇役”に追いやれる一方、代わって主力事業となるのは、映画や音楽、金融、ゲームに加え、デバイス事業だ。

特にデバイス事業は、世界シェア首位のイメージセンサーを抱え、今後もカメラやスマホに加え、車載用から医療用まで多角展開が見込める有望分野。2017年度の売上高は最大1兆5000億円と、今期見通し比7割もの増収を見込んでいる。今月2日には、総額1050億円を投じてイメージセンサーの生産能力を増強することも発表するなど同事業に力を入れる方針を打ち出している。この点からも、従来の消費者向け家電中心の会社から大きく変貌したという意味で、"非家電路線"を走ることになったと言えるだろう。

ソニーは2月18日、経営方針説明会を開催し、改めて全社の方向性について平井一夫社長が説明する見通し。デバイスやゲーム、エンタメ、金融が牽引するソニーの未来図について、改めてどのように説明するのか。全社の数値目標だけでなく、具体的な成長の絵を語るかが注目される。

許斐 健太 『会社四季報 業界地図』 編集長

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このみ けんた / Kenta Konomi

慶応義塾大学卒業後、PHP研究所を経て東洋経済新報社に入社。電機業界担当記者や『業界地図』編集長を経て、『週刊東洋経済』副編集長として『「食える子」を育てる』『ライフ・シフト実践編』などを担当。2021年秋リリースの「業界地図デジタル」プロジェクトマネジャー、2022年秋より「業界地図」編集長を兼務。

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