意外と侮れない「外壁タイル」剥落事故の怖さ アフターサービスは使える?事故の責任は?

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分譲マンションを購入後、一定の期間内の不具合や施工不良であれば、売り主である分譲・施工業者が無償で交換や修繕に応じてくれる保証システムがある。これがアフターサービス契約だ。アフターサービスの内容は売り主の契約上の責任として「規準書」に定められている。

外壁タイルについても規定されており、2年間の対応が一般的だ。中には5年間としている分譲会社もあるので、まずはご自宅のアフターサービス規準書を確認していただきたい(画像:さくら事務所)

またアフターサービスとは別に、宅建業者である売り主が負うものに「契約不適合責任」がある。契約の内容に適合しない場合、売り主に目的物の修補など責任を追及することができるというものだ。

そして買い主保護の観点から、契約不適合責任の責任期間を引き渡し日から2年以上にする特約を除き、買い主に不利となる特約はしてはならないというルールが定められている(宅建業法40条1項)。

さくら事務所でも、これまで数々の外壁タイルの浮き・剥離の調査に携わってきた。その経験上、基本的に2年目までの不具合に関してはアフターサービスや契約不適合責任の適応が可能で、無償で十分な対応を得られる事例が少なくない。

ただ、契約不適合責任の適応にあたっては、アフターサービスとは少し事情が異なる。因果関係の立証が不可欠となるからだ。言い換えると「ある事実がそれに先行するほかの事実に起因していること」の証明、これが因果関係の立証となる。

つまり外壁タイルが剥落したことと、外壁タイルの施工の不備がどのように関係しているのかを管理組合側が証明しなければならないのである。施工業者の故意・過失や損害発生との因果関係等の要件を立証するのは骨の折れる作業であり、管理組合にとって負担増となることは否めないだろう。

そこで実際の修繕にあたっては、次の3点に留意が必要となる。

1. 浮きや剥落の詳細な調査、原因追及。中立的な第三者機関の導入も検討すること
2. 原因の可能性を複数ピックアップし、その対策を織り込んだ補修を行う
3. 現在トラブルがない箇所も、将来的には補修が必要になる可能性がある。現状のみならず、将来的な外壁トラブルへの対応も協議しておく
次ページ10年以内の不具合なら契約不適合責任による交渉も可能
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