マクドナルド「赤字218億円」、失敗の本質 食のトレンドに"置いてきぼり"にされた
「……回転寿司というのがあるでしょう。あれが非常な勢いで伸びている。そのほかにも定食や牛丼と言った店。和食のチェーンというのは宣伝しなくてもいいんです。2000年もコメを食べている日本人には郷愁があるから。(中略)今年は和食が標的。和食のチェーンをのばさせないようにしなきゃいかん」(「スペシャルトーク」『Challenging Spirits 1971-2001 日本マクドナルド30周年記念誌』)
“鼻が利く”藤田氏は、日本型のファストフードチェーンである回転寿司が、将来的に強力なライバルになることを察知していた。回転寿司は、「和食ファストフード」である。近年は、代表的な和食としてグローバルに受け入れられるようになってきている。
世界を覆う健康志向と、ゆらぐマクドナルド信仰
世界中の人々を和食に向かわせている背景にあるのは、健康的な食への熱狂である。和食の特徴は、食材の鮮度を重視する調理法とカロリーの低さ、そして舌だけ(味覚)ではなく、目でも料理を味わう(視覚)食の楽しみ方にある。そして、日本人の和食回帰については、こんなデータが存在している。
夕食メニューの変化を調べた日清オイリオの調査(2013年)によると、「10年前と比べて和食を作る頻度が増えた人」は46%に上った。それとは逆に、「洋食を作る頻度が減った人」は32%だった。和食が増えた理由は、「健康的だから」が72%、洋食が減った理由は「カロリーが高いから」が(67%)と最も高くなった。
また、日本の社会が高齢化することは、食ビジネスにとって重要な意味を持っている。マクドナルドが日本で事業を開始した44年前と比べて、メインターゲットの10~20代の若者の数は大幅に減少している。
ハンバーガーのような高カロリーの食べ物を好んで摂取する若年層が激減したのだから、シニア層をターゲットとせざるをえない。ところが、ここ数年のマクドナルドの商品開発は、シニア層への対応を誤ってしまったように映る。
それに対して、コンビニエンスストアは、「シニアシフト」に成功している。高齢者や核家族向けに、小分けのパックを準備したり、シニア層を意識した高品質のパンや惣菜、デザート類を開発している。ファストフードといえど、高齢者をターゲットにしなければ、ビジネスが先細りになることは明らかである。