マクドナルド「赤字218億円」、失敗の本質

食のトレンドに"置いてきぼり"にされた

世界的な食のトレンドの変化に、従来型の「マスマーケティング」(大量生産、大量販売、大量消費)の仕組みで対応することが難しくなっているのである。また、ある程度は安全性を犠牲にしても、安い食材を選択しようとする企業の姿勢に対して、消費者は納得しなくなっている。

世界の食のトレンドに置いてきぼり

読者は驚くかもしれないが、店舗数で見ると、今や世界最大のファストフードチェーンはマクドナルドではない。店舗数が最も多いのは、サブウェイである(ただし、売上高ではマクドナルドが第1位)。マクドナルドの問題は、サブウェイに店舗数で抜かれたということだけではない。おひざ元の米国市場では、ファストフードの新興勢力との競争において、食材の質やメニューの魅力の点で、大きな脅威にさらされている。

たとえば、中規模ファストフードチェーンのチポトレは、持続可能な農業を標榜しており、畜産品にはホルモン剤や抗生物質を使用しないことを食材調達の基本的な条件としている。また、野菜の生産者には、できるだけ自然な状態で野菜を栽培することが求められ、それら鮮度のよい食材は店内で加工される。

実はマクドナルドは、チポトレが株式公開する直前の2006年まで、株式の一部を保有し、しかも、皮肉なことに最大の株主でもあった。チポトレは、米国マクドナルドが本業に集中するために捨てた売却ブランドだったのである。

これはあくまで筆者の推測だが、ヘッジファンドのパーシングからの要求で、2006年に負債を圧縮するために売却されたブランドがチポトレ株なのではないか。まったくの仮定の話ではあるが、マクドナルドが今でもチポトレを所有していれば、マクドナルドの事業展開はずいぶんと違ったものになったはずである。

もうひとつの新興チェーンであるファイブ・ガイズは、2013年の時点で、米国とカナダに約1000店舗を展開している。米国で今、最も成長が速い「ファスト・カジュアル・レストラン」のチェーンの最大手で、数年以内に2500店舗を目指すとしている。

それとは対照的なのが、マクドナルドやバーガーキングなどの伝統的なファストフード企業である。旧来型のモデルでは、基本的に安価な食材をグローバルに調達して、セントラルキッチン(工場)で効率よく加工し、調理済みの加工食材を、店舗で手早く提供する。しかし、米国市場でも、このタイプのファストフードレストランの人気に陰りが出てきている。

食に対するグローバルなトレンドは、おそらく以下のように要約できるだろう。

人々は、新鮮でおいしい食材と料理を求めている。ただし、フレンドリーなサービスは変わらずに。あまり高い値段は困るが、ときどきは多少のおカネを払ってでも、安全で健康によいものが食べたい!

グローバルな食のトレンドの変化にうまく対応できるかどうかが、マクドナルドの今後を占う試金石になるのではないかと考えている。

小川孔輔氏の新刊『マクドナルド 失敗の本質――賞味期限切れのビジネスモデル』好評発売中。

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