マクドナルド「赤字218億円」、失敗の本質 食のトレンドに"置いてきぼり"にされた
ところで、2013年まで日本マクドナルドのCEOを務めていた原田泳幸氏(現在は取締役会長)が、就任後にリリースしてきた“新商品”は、基本的に米国やグローバルで成功したものの焼き直しが中心だった。具体的には、「メガマック」「100円コーヒー」「えびフィレオ」などである。いずれもそれなりにヒットはしたが、いずれも米国やグローバルでの成功事例をコピーして日本市場に投入したにすぎない。
商品アイデアからプロモーションのやり方に至るまで、あまりにも米国本社に頼りすぎていたツケが回ってきた。日本人の消費者が求めている日本発のメニュー開発を怠ってしまったのである。長期的な低迷の原因は、日本を起点としたイノベーションの不足にあったのではないか。
一時的には業績をV字回復させた原田氏ではあったが、結局は、マクドナルドという重症患者に対して、10年間の「延命の機会」を与えたにすぎなかったのかもしれない。
大打撃を与えた「使用期限切れ鶏肉」と「異物混入」
そして、今のマクドナルドを語るうえで、切り離せない「食の安全性」に関する事件についても言及しなければならないだろう。2014年の使用期限切れ鶏肉問題、2015年に相次いだ異物混入についてである。
マクドナルドの経営陣は2001年にも、BSE問題で、消費者離れに続く赤字転落という手痛い経験をしている。その再来に、かつての教訓は生かされなかった。マクドナルドが提供する食の安心・安全に対する信頼性が揺らぎ、消費者の間で大いに動揺が広がった。
標準的なファストフードチェーンは、安価な食材をグローバルに調達して、セントラルキッチン方式で材料を大量に加工する。開発段階で絞り込んだシンプルなメニューを、効率のよいフランチャイズシステムを通して大量に販売していく。
このシステムでは、コスト効率が優先されるため、提供する商品とサービスは画一的になりやすい。オペレーションの標準化と均一な商品の提供は、それ自体は悪いことではないが、これだけ消費者の好みが多様化している昨今、画一的なメニューを提供するだけでは消費者のニーズをとらえきれない。