「愛情不足のまま成長した人」過去を語る時の特徴 親との記憶を振り返る際に見られる3つの傾向
両親が幼少期に寄り添ってくれなかったのは自分のせいではないこと、そして与えられた過去から自由になる力があることに気づくのは、解放感あふれるすばらしい体験になるだろう。その解放感を得たあと、あなたは今後の行動に責任を負い始めるだろう。わたしたち臨床医が「行為主体性」と呼ぶものだ。
ある人はこう表現した。「わたしの身に起こったことは、わたしのせいではありません。でも、今の自分がすることには責任があります」。
実のところ、人が今の自分になり、今の行動パターンを発達させたのは、それが特定の状況に適応するための戦略でもあったからだ。人は生き残るための戦略を見つけ、最善を尽くす。言い換えれば、生きていくうえで人は環境に適応し、特に子どものうちは、家族のなかで生き延びるために必要な生き残り戦略のパターンを身につけてきた。
しかし、大人の自分には、それが自分を閉じこめる牢獄になっているのかもしれない。
自分の愛着のパターンを変えた90代の男性
あなたはその場にとどまっている必要はない。自分の経験でつくられた牢獄から自由になっていい。人間関係は変えられるし、愛着パターンも変えられるし、実際に変わっていく。
研究によると、子育てに取り組むとき、自分の人生を理解すれば、心が解放され、なりたい親になることができる。
筆者は以前、90代の男性と面談したことがある。男性は自分の人間関係の戦略、大人になってからの愛着パターンを変化させて、もっと惜しみなく愛情を注ぎ、配偶者や家族全員の心に寄り添えるようにした。その変化は、彼の妻が筆者に、「あなたは夫に〝脳移植〟をしたのですか?」と尋ねたほどだった。
実際、研究によると、大人になってから安定型愛着を獲得した親でも、恵まれた幼少期を過ごして〝継続安定型愛着〟を身につけた人と同じくらい効果的な子育てができるという結果が出ているのだ。