北越メタル、「35%の大株主」とバトル勃発の裏側 取締役案で真っ向対立、6月21日株主総会の行方

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もともと両社の関係は悪くなかった。当然だ。棚橋社長も、武仲専務も当時のトピー工業の経営陣の意を受けて北越メタルにやってきたのだから。歯車が狂い出したのは2021年2月のことだ。トピー工業から同社執行役員を北越メタルの次期取締役として受け入れるよう要請があった。

要請の理由は、①同社(トピー工業・筆者注)執行役員に取締役の勉強をさせたい、②同社保有の北越メタル株式に関する政策を検討したい、③同社の持ち株割合に照らして同社の要望を受け入れるべき、というものだった。当該執行役員は2年でトピー工業に戻すので、最終的には副社長にしてほしいという要望もあった。

北越メタルの指名報酬委員会は、トピー工業の要請とその理由を聞いて「トピー工業の利益を図るものに過ぎない」と拒否した。北越メタルは近年、ガバナンス強化に取り組んできた。取締役5名のうち3名を社外とし、2020年には4名のうち委員長を含めて3名を社外取が占める指名報酬委員会も設置していた。

このときはとりあえず収まったが、関係修復のために北越メタルの武仲専務とトピー工業の大洞専務と中村毅常務で、事業シナジーの実現についての協議が始められた。2021年の株主総会は何ごともなく終わり、その後も両社の協議は継続してきた。

コーポレートガバナンスの明らかな後退

事態が再び動き出したのは2022年1月のこと。トピー工業が同社グループの役員上限年齢を理由に、棚橋社長の退任を要求。北越メタルの指名報酬委員会は、「北越メタルはトピー工業の子会社ではなく、独立した上場会社である」と、再び要求を拒否したのだ。

北越メタル側は代案として、大洞氏を副社長として受け入れて1年後に社長とする案、株主提案の3名を受け入れて8人とする案などを提示した。しかし、トピー工業はこれを拒否。株主提案に至ったというのがこれまでの流れだ。

会社法に詳しい東京大学の田中亘教授は、北越メタルからの依頼に応じて会社提案を支持する意見書を提出。その中でトピー工業の株主提案について、「コーポレートガバナンスの明らかな後退であり、コーポレートガバナンス・コードやグループガバナンス指針が問題とする利益相反リスクを高めるものである」と指摘している。

東京証券取引所が定めるコーポレートガバナンス・コード(CGC)では、「上場会社の取締役会は、株主に対する受託者責任・説明責任を踏まえ、会社の持続的成長と中長期的な企業価値の向上を促し」(基本原則4)と書かれている。いうまでもなく、取締役は株主に対する責任がある。

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