マザウェイズはなぜ破産したか?創業社長の独白 1粒でも雨が降ると商売に響く会社経営に疲れた

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もう1つの欠点は、売れ行きが気候に大きく左右されること。長年仕事をしているとよく分かるのですが、 1粒でも雨が降ると売り上げが下がる。前年と比べて、同じ店舗で2割下がったりする。これは本当です。 1粒でも雨が降ると、そうなる可能性がある。

秋冬の問題もあります。秋冬で気温が5度違うと売り上げが3割下がる。特に子供の服の場合は天候の変化に強く影響を受ける特徴があります。

こうした課題はありましたが急成長を続けていましたから、このあと、経営が苦しくなることは想像すらしていませんでした。父が創業し兄が引き継いでいた根来の経営が苦しくなったときも、人を引き取ったり、年間数億円の支援をしたりしていました。それもこれも「この先も成長は続く」と考えていたからです。

ところが、2013年から状況が一変します。

円安から始まる誤算

大きな為替変動が起きたのです。日本円の対ドル相場は20円以上も下落。一気に製造原価が跳ね上がりました。

年間30億円ぐらいの調達規模が、為替の変動でいきなり35億円になりました。 5億円の値上がりです。経常利益で5億円出せていても、原価が5億円アップすれば、それがゼロになる。

この5億円をどうカバーするか。最初はコストダウンでどうにかしようと考えたのですが、せいぜいやって1億円ぐらい。そこでどうしたか。

マザウェイズは3000円前後の価格設定で「低価格でかわいい商品」として人気を博してきましたが、苦肉の策で商品を10~15%値上げしたのです。結果的にこの値上げが失敗でした。

当時、うちには約65万人のお客様がいました。その中でも年間5000円以上お買い上げいただいている25万人を「コア客」と定義していました。残りの40万人はいわゆる浮動客です。値上げによってこの40万人の浮動客がごそっと消え、大きく売り上げを落としてしまったのです。

本来、顧客というのは浮動客で成り立っているのに、その大切さを見誤っていました。社内では「値上げでコアなお客様の客単価が伸びているので大丈夫」という認識でしたが、そうではなかった。 40万人の浮動客による500円や1000円ぐらいの売り上げの積み重ねが大きかったわけです。

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