マザウェイズはなぜ破産したか?創業社長の独白 1粒でも雨が降ると商売に響く会社経営に疲れた

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売り上げが減るとどうなるか。商品の回転率が悪くなり、大量の在庫を抱えてしまうことになる。しかし、銀行から借り入れを維持するためには、在庫回転率が悪くなった理由を説明する必要があります。「シーズン後に商品を持ち越しても、翌年に売れるんだから大丈夫です。これは不良在庫じゃありません」と。そんな言い訳をしながら、不承不承、融資を継続してもらい、その後も出店を続けていきました。

本音ではもう出店したくなかった

本音を言うと、最後の数年はもう出店はしたくなかった。ですが出店は我々にとって成長している証しであり、金融機関で借り入れをするための手段でもありました。 出店を抑制して、店舗数を減らし、経費を厳しく抑え、もっと小さな会社を目指すのも1つの道だったかもしれませんが、それはしたくないと考えていました。

ほかにも要因はありますが、破綻の原因を端的に言うと、為替変動に影響を受けて値上げを断行し、客離れを起こして売り上げを落とし、多くの在庫を抱えたことです。 こうして2019年に私は会社を閉じることを決めたのです。

そのことを弁護士さんに相談すると、あまりにも早く、次々と破産の手続きが進んでいくことに驚きました。まだ相談段階という気持ちがあったからです。ですが、先延ばしにしても仕方がないとも感じていたので、指示通り破産手続きを進めました。

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会社を潰してしまったし、従業員を路頭に迷わせてしまったことに思うところはあります。これを話すとみんなに怒られてしまうかもしれませんが、最後は会社経営に飽きてしまったんです。飽きたというか、疲れたというか。毎日思い悩むことにも、売り上げを気にすることにも……。

ずっと心の奥底にあったのは、梅雨の時期に雨が降ったとき、「雨もなかなかいいものだな」と思える心の余裕が欲しい、というものでした。 1粒の雨が気になる商売をしていましたから。

とても情緒的、感傷的な話になりますが、努力してどうにかしようという気持ちよりも、もうやめたいと思う気持ちが勝ってしまったのです。(談)

日経トップリーダー編集部

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