日本から世界を驚かす会社が出ない根本的な事情 イーロン・マスク級のぶっ飛んだリーダーがいない
ビル・ゲイツはマイクロソフトを世界一の企業に育て、現在ではビル&メリンダ・ゲイツ財団でイノベーションを加速する仕事をしています。主な関心としては、伝染病の撲滅や21世紀型の原子力開発の推進など誰も手をつけようとしていなかった領域に注目し、その分野の専門家を集めてリーダーシップを発揮しています。
アマゾン創業者のジェフ・ベゾスはトヨタ方式のカイゼンをインターネット通販に導入しました。世界最大級の注文をさばくために、当初は巨大な倉庫で低賃金の労働者に1日16キロを歩くような重労働を強いて、「ブラック企業だ」と世間から批判されていたのですが、すぐに「人が歩いて商品をピックアップするよりも、倉庫の棚が歩いてきたほうが早くピックアップできる」ことに気づいて倉庫の棚をすべてロボット化し、同時に重労働がなくなるという働き方改革も実現しました。宅配の際には再配達するよりも置きっぱなしにして盗まれた商品代金を補償したほうが安いことに気づき、置き配を導入します。
フェイスブック(現メタ)創業者のマーク・ザッカーバーグはSNS事業以外に、仮想通貨リブラを発行することでお金の未来を変えることを構想しました。彼の構想はイカれすぎていたために世界の中央銀行から敵だとみなされ、G20が全力でつぶしにかかりました。計画が頓挫したことで株価が低迷しているとはいえ、現代の通貨システムの矛盾をイノベーションで変えようなどと考えるのは、いい意味で頭がぶっ飛んでいる証拠です。
テスラのイーロン・マスクは、複数の大企業を同時に経営することで天才起業家の名をほしいままにしています。ペイパルの母体となる企業を創業し、テスラと同時並行で立ち上げた民間宇宙会社スペースXはNASAに代わって宇宙飛行士を国際宇宙ステーションに運んでいます。
イーロン・マスクの構想の中でも発想がイカれているのが、真空列車と呼ばれるハイパーループです。リニアモーターカーよりも理論的に速く走行できるこのハイパーループが実用化されれば、東京-大阪間とほぼ同じくらいの距離に相当するサンフランシスコ-ロサンゼルス間は35分でつながることになります。
「同時多発的イネーブラー」がリーダーの条件を変えた
さて、1980年代から90年代にかけては主流ではなく傍流だったこのように頭のイカれたリーダーたちが、21世紀に入って世界の歴史を変える力を手に入れたのはなぜでしょうか。
その理由は「イネーブラー」と呼ばれるイノベーションを引き起こす新技術が、同時多発的に実用化レベルに達したことです。
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