サクラ/eKクロスEVは軽BEV普及の起爆力になるか 新車購入者「1万人調査」に見る軽BEVの可能性

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2台目以降の需要(併有車としての需要)を考えたとき、日本の場合、雪国は避けられない。しかし、BEVは寒冷地と相性が悪いとされている。豪雪地帯では4WD仕様に乗るのが一般的だが現状、サクラにもeKクロスEVにも4WDは用意されていない。

「ekクロスEV」はSUVテイストのデザインを特徴とするが4WDの設定はない(写真:三菱自動車)

国土交通省によれば、全国1719市町村のうち、532市町村(30.9%)が豪雪地帯である。さらにそのうち201市町村(11.7%)は、特別豪雪地帯だ。国土のうち、実に50.8%が豪雪地帯なのである(特別豪雪地帯=同19.8%)。

自動車検査登録情報協会によれば、全国の乗用車の保有台数6180万台のうち、特別豪雪地帯を有する都道府県(北海道、青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島、群馬、新潟、富山、石川、福井、長野、岐阜、滋賀)の保有台数は、1629万台と26.4%になる。

これに、豪雪地帯を有する都道府県(栃木、京都など)も加えれば、さらに雪国で保有されている自動車は多い。「世帯あたり保有台数」の多い都道府県は降雪地帯であることが多いので、軽自動車BEVの普及を考えた際に、雪国は決して無視できるボリュームではない。

市場活性は他メーカーの参入次第?

これはサクラ/eKクロスEVそのものの話ではなく、軽自動車BEV全体の話となるが、普及速度を上げるためには、市場内に“どれだけの選択肢があるか”が重要だ。そのためには、日産と三菱だけではなく、軽自動車でいえばダイハツ、スズキ、ホンダの参戦も必要である。

というのも、新車販売は既存顧客からの代替需要が売り上げの大部分をしめる。そのためメーカースイッチ(他メーカー車へ乗り換えること)が非常に高い割合で起こり、「他社から顧客を奪取し続けシェアを拡大する」というシナリオを描くには限界があるのだ。

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メーカーごとのディーラーの数も有限であることから、各社の参戦が待たれる。補助金のあるうちに販売することが、既存顧客の流出を防ぐうえで重要になるだろう。

今、日本の新車販売の約4割を軽自動車が占めている。そのため、軽自動車BEVが普及するかどうかは、日本でのBEVの普及、ひいては国内メーカーのグローバルでのプレゼンス向上という意味でも試金石となる。サクラ/eKクロスEVの車としての評価は高い。この2車が軽自動車BEV普及のきっかけになるかは、他メーカーの手にかかっているといってもいいかもしれない。

三浦 太郎 インテージ シニア・リサーチャー

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みうら たろう / Taro Miura

北海道大学大学院理学院卒業後、インテージ入社。自動車業界におけるマーケティング課題の解決を専門とし、国内最大規模の自動車に関するパネル調査「Car-kit®」の企画~運用全般に従事。

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