サクラ/eKクロスEVは軽BEV普及の起爆力になるか 新車購入者「1万人調査」に見る軽BEVの可能性

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2011年にN-BOXが登場して以降、軽自動車検討者にとって、200万円は購入の視野に入る価格帯になったのだ。もちろん、「以前より高くなっている」という実感はあるはずだが、サクラ/eKクロスEVの補助金適用後の価格は、既存の軽自動車と張り合えるものだといえる。これは、軽自動車BEV普及に向けた好材料である。

ただし、サクラ/eKクロスEVは、スライドドアを持つスーパーハイトワゴンではなく、「ワゴンR」や「ムーブ」などと同じハイトワゴンである。これがどれくらい響くか。調査結果から考察してみよう。

販売台数ランキングでトップ3のN-BOX、スペーシア、タント購入者に、スーパーハイトワゴンの購入理由を聞いてみた。

すると、「スライドドア」と答えた人は、N-BOX:46%、スペーシア:60%、タント:55%と、ほかの選択肢と比較して多い。スライドドアは、スーパーハイトワゴンの主要な購入理由になっている。

一般に、ボディタイプは車の役割を規定するため、ライフステージが紐づいてくる。スーパーハイトワゴンであれば、子どものいるファミリーや乗り降りのしやすさから60代以上が多くなる。また、セカンドカー需要も多いため、男女比では女性が6割程度と多数派になる。

スライドドアを持つスーパーハイトワゴンが軽自動車の主流になっている(写真:本田技研工業)

サクラ/eKクロスEVがもたらすBEVとしての新価値や、質の高い内装などがどれだけ購入意欲を押し上げるのか。軽自動車のサイズ・コストという制限下で、スライドドアを求めるような人々の需要を取り込むことができるのかに注目である。

180kmの航続距離は足りるのか?

サクラ/eKクロスEVの航続距離(1回の充電で走れる距離)は、180km(WLTCモード)となっている。日産が軽自動車ユーザー(ガソリン車)の利用動向を調べたところ、半数以上の人の走行距離は1日「30km以下」であり、「30~100km未満」まで広げると全体の8割を超えるそうだ。航続距離が180kmあれば利用者の94%の需要に対応できる、という結果も出ているようである。

とはいえ、ガソリン車の燃費がカタログ数値どおりにいかないように、BEVの航続距離も実際の使用状況では数値よりも短くなると考えると、もう少し航続距離がほしいと思われるかもしれない。

その点については、インテージが新車購入者1万人(パワートレーン問わず)に対して行った調査が参考になる。調査の中で、「BEVに最低限求める航続距離」を聞いたところ、次のような結果が得られた。

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