中部電力、「顧客負担による早期復配」の是非 料金値上げで黒字化果たし、2期ぶりに復配

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 電気料金に関しては、昨年来の原油安に伴い、燃料費の低下が今年4~5月ころから電気料金の低下となって顧客に還元されるとの見通しを示した。毎月の電気料金は「燃料費調整制度」を通じ、その3~5カ月前の燃料価格平均を参考に決められる。中部電の場合は燃料の中で液化天然ガス(LNG)の割合が石油に比べて圧倒的に高い。LNGの調達価格は3カ月前の原油価格を参考に決定されるため、燃料安が電気料金に反映されるまでには6~8カ月のタイムラグが生じる。結果的に、昨年秋以降の原油価格急落が今年春以降に還元される見通しだ。中部電の担当者は「4~5月に(家庭用の標準料金が)百数十円程度安くなるかもしれない」と話す。

原油安効果は業績には中立

もっとも、料金改定による電気料金変更と、燃料費調整制度による料金変更とは枠組みが異なる。電力業界共通の燃調制度による料金変更は、時差こそあれ業績に対して基本的に中立だ。一方、原価計算から見直す料金改定は、直接的に業績を上下させる。期初の料金改定値上げがなければ中部電は今期も赤字が続いていたと見られ、黒字化は顧客の負担のうえに立っている。

ちなみに電力大手10社の今期配当予想を見ると、ばらつきがある。料金値上げながら実質国有化の東京電力、今期連続赤字見通しの関西電力、九州電力が無配。北海道電力は未定、料金値上げで黒字化見通しの四国電力も未定となっている。一方、料金を値上げせずに黒字となる北陸電力、中国電力は未定だが、50円配継続が濃厚。原発保有なしの沖縄電力も、値上げなしで黒字と60円配を維持する。

これらに対し、2013年9月に料金を値上げして2013年度から黒字化した東北電力は2013年度に5円配を実施、2014年度は増益を見込んで15円配と増配する予定。値上げした年度に小幅ながら復配したという点で、東北電力は、中部電力の前例といえる。

中村 稔 東洋経済 編集委員
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