沈黙の引退、国鉄形「EF66」はなぜ人気があるのか 流線型の貨物用電気機関車、ブルトレでも活躍

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寝台特急の廃止により、JR西日本のEF66は1995年から順次廃車され、「富士」「はやぶさ」の廃止で2010年に全廃されている。一方で、JR貨物のEF66は1993年から2004年にかけて更新が行われ、大規模な修繕を施して維持されたほか、JR西日本からは4両を譲り受けている。

JR西日本のEF66では引退まで国鉄時代の姿を踏襲し、細部に手を加えた程度で維持されていた。しかし、JR貨物のEF66では車体の色を塗り替えた車両が大半で、併せて前面の装飾も外してしまった車両ばかりとなっていた。だが、27号機はJR貨物の機関車として更新を受けたにもかかわらず、国鉄時代に近い姿のままで残された。ブルートレインを牽引した頃のEF66と同じ姿でもあり、ファンの間からは「ニーナ」とも呼ばれて親しまれることになる。

JR貨物のEF66も2001年に試作機の901号機(元EF90)が廃車されたほか、後継の機関車が増えたことで2007年から本格的に廃車がはじまった。2018年には、JR貨物が保有する国鉄形のEF66は27号機の1両だけ稼働する形となり、2022年に引退するまで孤高の存在として貨物列車の先頭で活躍した。

1分も経たずに完売した有料撮影会

JR貨物が保有するEF66には、国鉄から継承した車両のほか、1989年から1991年にかけてEF66形100番代として33両が造られた。JR発足後のバブル景気で貨物列車の需要が増え、大出力の機関車が必要となったために造られた車両だが、こちらはデザインが異なっている。実は100番代も2020年から廃車がはじまり、2021年までに初期形の8両が、27号機に先んじて引退している。

2022年5月21~22日には、JR貨物のEF66が配置されている吹田機関区で機関車の特別公開が行われ、今回引退した27号機も展示して有料の撮影会が実施された。撮影会の募集はインターネット上で行われ、5月11日の14時に発売が行われたが、発売から1分経たないうちに完売している。

国鉄形のEF66は人気の機関車でもあり、鉄道博物館に11号機が、京都鉄道博物館には35号機が保存されるなど、現役引退後もその姿を見ることができる。

柴田 東吾 鉄道趣味ライター

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しばた とうご / Tougo Shibata

1974年東京都生まれ。大学の電気工学科を卒業後、信号機器メーカー、鉄道会社勤務等を経て、現在フリー。JR・私鉄路線は一通り踏破したが、2019年に沖縄モノレール「ゆいレール」が延伸して返上、現在は車両研究が主力で、技術・形態・運用・保守・転配・履歴等の研究を行う。『Rail Magazine』(ネコ・パブリッシング)や『鉄道ジャーナル』など、寄稿多数。

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