沈黙の引退、国鉄形「EF66」はなぜ人気があるのか 流線型の貨物用電気機関車、ブルトレでも活躍

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EF66はデザインのほか、パワーでもほかの国鉄形電気機関車と比べ、群を抜いている。EF66の出力は3900kWで、同時期に造られた国鉄形電気機関車が持つ出力の約1.5倍ないし2倍程度となる。重たい貨物列車を高速で走らせるため、大きな出力を持たせているのだ。

貨物列車はトラックと競合しているが、EF66が生まれた頃は既にトラックによる物流が盛んに伸びていた時期でもあり、その対策として貨物列車の高速化を行う必要に迫られていた。当時の国鉄で検討した結果、重さ1000トンの貨物列車を時速100kmの高速度で牽引する性能を機関車に持たせるのが適当とされ、これには3500kWの出力が必要とされていた。

これに見合った性能で造られたのがEF66なのだが、現在のJR貨物で主力となっている機関車の性能を見ると出力3500kW程度で造られていて、EF66の性能を引き継いだ形となっている。ちなみに、関東で走っている最近の通勤電車の出力は、10両編成で3000kW台だ。EF66の出力は、10両編成の通勤電車を若干上回る程度としている。

また、現代の貨物列車では品物をコンテナ(容器)に収めて運ぶスタイルが主流となっている。高速道路などでよく見かける大形トラック2台分ないし2.5台分がJR貨物のコンテナ車1両に相当し、コンテナ車1両で列車の重さは50tとして計算しているのが基本だ。先の1000トン列車であればコンテナ車は20両、大形トラックでは40~50台分に相当する輸送力となる。

現在の東海道本線では、「スーパーレールカーゴ」という佐川急便の貨物列車が最高時速130kmで走っているが、これは1日1往復の貨物電車による例外的な存在だ。機関車が牽引する貨物列車では最高時速110kmの列車が最速で、列車の重量は1200トン、長編成の1300トンの列車では最高速度が100kmとして設定されている。最高時速110kmの貨物列車の運転は1988年からはじまったのだが、この貨物列車の先頭に立ったのがEF66で、当初の計画よりも重たい列車を高速で牽引している。

鮮魚列車でも活用

EF66が本格的に使用されたのは1968年からで、当初はコンテナ列車のほかに鮮魚列車にも使用された。鮮魚列車では東京市場行の「とびうお」や大阪市場行きの「ぎんりん」と呼ばれた列車があり、これらの列車の大半の区間をEF66が牽引していた。鮮魚列車は貨車の老朽化やコンテナ列車・トラック輸送への移行でなくなるが、コンテナ列車では引き続き現役の最後まで使用された。

国鉄形のEF66は、試作機を含めて1975年までに合計56両が製造された。東海道本線や山陽本線を高速で走るコンテナ列車を年々増強していったため、増備を続けていたのだった。だが、国鉄全体では貨物の需要がトラックに奪われたのが実態で、国鉄末期には貨物列車にも大鉈を振るっている。国鉄時代の末期には、EF66を持て余し気味にしていたと言っていいのかもしれない。

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