「都合のいい労働者?」フリーランスの過酷な実態 搾取からの保護と自由な働き方の保障という難題
契約上は企業などから業務委託を受ける個人事業主だが、その実態は限りなく雇用された労働者に近い。そんな「労務提供型」のフリーランスが、発注者とのトラブルに巻き込まれるケースが増えている。政府は兼業・副業と並ぶ新しい働き方として、フリーランスの環境整備を進めている。しかし企業にはフリーランスを、社会保険料や残業代が不要な「都合のいい労働者」と見なす風潮も、いまだに根強いことがうかがえる。
「雇用と一緒」が一転「あなたは業務委託」
「契約を結ぶ際、業務委託契約なのに発注者が働き手に『実際は雇用しているのと同じですよ』などとごまかしの説明をして安心させ、(契約書に)ハンコを押させるといった事例もあります」
フリーランスの契約上のトラブルなどの相談窓口「フリーランス・トラブル110番」を運営する第二東京弁護士会の堀田陽平弁護士は、上のように話す。
働く側が、雇われているのだから雇用も賃金も保障されていると思っていたら、突然、契約解除や報酬引き下げを言い渡される。抗議すると「あなたは業務委託だから」と言われる……といったトラブルが起きているのだという。
企業側にとっては、本来は直接雇用すべき労働者を個人事業主扱いにすれば、社会保険料や残業代の支払いが不要になる。正社員に適用されるような、厳しい解雇規制に縛られることもない。
堀田弁護士は相談の中でも、とりわけ深刻なのが「ひとつの発注者からの報酬で生計を立てている人が突然、一方的に契約を解除されるケース」だと指摘する。
内閣官房が2020年に実施した「フリーランス実態調査」(回答数9392)によると、フリーランスの40.4%が、1社だけと取引していた。堀田弁護士によると、契約によっては一定期間、同業他社で働くことを禁じる「競業避止義務」を課せられ、仕事を失った後も次の顧客探しが難しくなるケースがあるという。
「特に運送業や建設業は、業務量の多さなどからほかの仕事をする余裕のないケースもしばしばあり、契約を一方的に解除されると、突然生計の手段を失ってしまう。かなり困窮した人から『明日のお金がないんです』という訴えもあります」
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