住友金属鉱山、「ニッケル大型案件」消失の舞台裏 事業化の撤退表明直後に中国企業が名乗り
4月28日、住友鉱山とポマラプロジェクトを進めてきたPTヴァーレ・インドネシア(PTVI)が、中国の非鉄企業・華友コバルト業(本社:浙江省)と基本契約を結んだと発表したのだ。両社は年12万トンの生産能力を持つ製錬プラントの建設で合意、半年以内に最終契約を締結し、その後3年以内に操業を始めるという。
PTVIは住友鉱山にとって、長年ニッケル鉱石の供給を受ける戦略的パートナーだ。資源メジャーのブラジル・ヴァーレとインドネシアの鉱業公社のほか、住友鉱山も15%出資する。実はポマラは、もともとPTVIから持ち込まれた案件だった。
なぜ突如破談になったのか。住友鉱山の松本伸弘・取締役金属事業本部長は、「PTVIとのスケジュールが合わなかった」と打ち明ける。
許認可が下りていないポラマは「未開の地」
PTVIには開発を急がなければならない事情があった。同社はインドネシア政府との間で鉱業事業契約を結んでいた。PTVIは保有する鉱区の権利を維持するために、何らかの操業(製錬)を始めなければならない。その期限は2025年12月。住友鉱山が想定する「2020年代後半」とは相当な開きがあった。
住友鉱山もPTVIの事情は承知していた。「全体的にコロナ禍でプロジェクトが遅れていたこともあり、2025年までに事業化を正式決定していればいいというのが、お互いの認識だった」(松本本部長)。
しかし、2022年に入って、なぜかPTVIは2025年からの商業生産にこだわる姿勢に変わったという。住友鉱山も計画より早く商業化を実現するプランを示したが、両社の溝は埋まらなかった。
住友鉱山の対応が遅かったように見えるが、そうとも限らない。ポマラでは事業化に向けた許認可がまったく取れていない状況だったからだ。開発に必須な事業環境許可やダム建設のための許認可が下りておらず、木を伐採することも満足にできない状態だったという。
つまり、調査の開始から10年も経過しているのに、ポマラは「未開の地」のままなのだ。今後許認可を取ったうえで、木を伐採して整地し、アクセス道を整備し、ダムを造り、ようやくプラントの工事に入る。住友鉱山にとって「2020年代後半の稼働」は、現実的なスケジュールだった。
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