日米の株価がもう一段上昇しそうな「2つの理由」 ただし2023年は景気が反落する懸念がある

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市場心理が悲観すぎるということは、かえってすでに株価が売られすぎており、今後は知れ渡った悪材料に株価が押し下げられるというより、意外な好材料に株高方向で市場が反応しやすい、とも解釈できる。さらに実体のマクロ経済面でも、想定外に世界経済、ひいては世界株価を「今年内は」大きく押し上げそうな要因がある。それは2つの「ペントアップデマンド」だ。

個人消費は一段と拡大へ

ペントアップデマンド(pent-up demand)のpent-up とは、「抑制された、抑圧された」という意味だ。何らかの要因で抑え込まれた需要は、たまりにたまったあと、まとまってふき出すことになる。

その1つとして想定されるのは、アメリカの個人消費だ。コロナ禍以降、連邦政府は経済政策として、家計に給付金を配った。また、失業保険給付金の上乗せも行われた。それが家計の所得を支えてきた。ところが一方で家計支出については、コロナ禍により、旅行や外食、外出しての小売店での買い物などが抑制され、ずっと抑え込まれてきた。

その結果として、家計の貯蓄率(貯蓄、つまり消費しなかった残りの金額が、可処分所得の何%を占めるか)は、コロナ禍の前はせいぜい7~8%程度で推移していた。これが、2020年4月には33.8%、2021年3月には26.6%へと、跳ね上がりをみせた。そうした貯蓄率の大幅な跳ね上がりは一時的な面もあったが、最近の数カ月間においても2021年12月に8.7%でピークをつけるなど、貯蓄率は高めの推移を続けてきた。

つまり、コロナ禍の間に、アメリカの家計は心ならずも貯蓄を積み上げてきたことになる。そこへ、コロナ禍を潜り抜けたと判断した消費者の心理が好転することで、長い間抑制された個人消費が、貯蓄を取り崩しながら一気にふき上がる可能性があるだろう。

実際のところ、最近じわじわと貯蓄率は低下を始め、2022年4月には4.4%にまで下がっている。この現象は、アメリカの個人消費が今後一段と拡大する兆しだと解釈できる。

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