リコーはなぜ「三愛水着」を今、手放すのか ワコールへの事業売却で70年の"蜜月"に幕

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三愛イメージガールは存続する予定(三愛提供)

もともと縁の深い両社だったが、その関係がより深まったのは2005年。バブル期には1000億円あった国内の水着市場が、バブル崩壊を経て、200億円にまで急縮小。不振に陥った三愛の株式をリコーが100%取得し、完全子会社にしたのだ。

2004年8月期の三愛の業績を見ると、営業利益こそ26億円あったが、そのうちの30億円前後は着メロ配信事業によるもの。本業は赤字だったと見られる。その後は財務体質改善のため、2006年に着メロ事業を120億円で売却。本業もコンサルティング会社のサポートなどを受け、業績は一時的に持ち直した。

だが、地方においてファストファッションの普及が進んだことなどが逆風となり、最近は再び厳しい状況が続いていた。「日本でトップシェアを誇る水着事業は利益が出ていたが、下着事業が苦戦していた」(ワコール広報)。

ワコールによれば、事業譲渡の打診があったのは2014年1月。1年に及ぶ協議の末、今回の発表に至ったようだ。苦しい経営状況と、もとより三愛とリコーとの間にシナジーが薄かったことから、より相乗効果を見込めるワコールに事業譲渡することを決めた。交渉はリコーではなく、三愛が主導したという。

三愛買収でワコールが狙うもの

ワコールは三愛買収で手薄な分野の強化を図る

今回の事業譲受でワコールが得るものは、年商38億円の水着事業と同17億円の下着事業。2000億円近い売り上げを誇る同社にとっては一見、それほどの影響があるとは思えない。しかし、会社側は絶好のチャンスと捉えているようだ。

同社の水着事業はかつてファッション性の高いものを手掛けていたが、今は縮小し、水泳用の機能性水着にフォーカスしている。今回の事業譲受によってファッション水着で国内トップシェアを有する三愛水着楽園を獲得するのを機に、再びこの分野に力を入れていくという。今後はワコールの販路を生かして、アジアを中心とした海外に売り込み、拡大を目指す。

下着部門も「今まで比較的手薄だったハイティーン向けを補完できる」(ワコール広報)。三愛イメージガールも存続させる方針だ。

創業以来70年の歴史の中で、日用品の販売に始まり、水着への事業転換、リコーによる子会社化と激しい動きを繰り返してきた三愛。そして今回たどり着いた先は、業界の旗手であるワコール。ここを安住の地として、今度こそ“楽園”を築くことができるか。

渡辺 拓未 東洋経済 記者

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わたなべ たくみ / Takumi Watanabe

1991年生まれ、2010年京都大学経済学部入学。2014年に東洋経済新報社へ入社。2016年4月から証券部で投資雑誌『四季報プロ500』の編集に。精密機械・電子部品担当を経て、現在はゲーム業界を担当。

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