東ソーが死守した素材、電気自動車向けに開花
結局大きな混乱は起こらず、乾電池は余り、電解二酸化マンガンの需給バランスは崩れた。そこに、中国の乾電池、電解二酸化マンガンメーカーが安売り攻勢を仕掛けてきた。
日本の電解二酸化マンガンメーカー3社の採算は悪化。これが一因となり、日本重化学工業は02年に会社更生法の適用申請を余儀なくされた(06年に更生完了)。三井金属は事業を徐々に縮小し、06年に撤退した。
同じく赤字が続いた東ソーだけが猛攻に耐えられたのには、理由がある。経済産業省を巻き込んで、中国などを相手に不当廉売(アンチダンピング)関税を仕掛けたのだ。
不当廉売関税は、輸出価格が輸出国の国内価格などよりも低い場合、不当廉売として差額に税金をかける仕組み。WTO(世界貿易機関)で認められた制度だ。東ソーは07年にこれを申請し、08年に関税が発動。その結果、東ソーの電解二酸化マンガン事業は黒字へ復活した。
東ソーは以前、同じマンガン鉱石から精製される正極材原料の金属マンガンを生産していたが、安い中
国品に侵食され撤退したという苦い過去があった。不当廉売関税の手続きに奔走した畠山氏は「電解二酸化マンガンは、リチウムイオン電池向けに可能性があり、事業を守る必要があった」と打ち明ける。
電解二酸化マンガンはEV1台当たりに約50キログラムが使われる。1個当たり10グラムの乾電池向けとはケタが違う。古くて新しい素材は、爆発的に拡大する可能性を秘めている。
[+画面クリックで詳細チャートを表示 <会員登録(無料)が必要です>]
(武政秀明 撮影:今 祥雄 =週刊東洋経済2011年2月26日号)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら