東ソーが死守した素材、電気自動車向けに開花
日産自動車が昨年末に日米で発売した電気自動車(EV)「リーフ」。日本では今年1月から個人客向けの納車が始まっている。
三菱自動車の「アイミーブ」に続く本格的な国産EVは、急速な立ち上がりを見せている。昨秋から生産する追浜工場(神奈川県)では3月に月産4000台のフル生産に入る。
EVをめぐる世界の自動車メーカーの動きは活発だ。トヨタ自動車やホンダ、マツダも2012年の参入を表明。野村総合研究所の北川史和グローバル戦略コンサルティング部長は、「世界のEV市場は、少なく見積もっても20年には100万台の大台に達する」と試算する。
EVの普及は部材メーカーに収益機会をもたらす。心臓部のリチウムイオン電池もその一つ。正極材、負極材、セパレータ、電解液などの部材は注目を集め、早くも素材メーカー間の競争が激しさを増している。
この喧噪の中、EV向けリチウムイオン電池のある素材で独走態勢を見せる企業がある。総合化学メーカーの東ソーだ。正極材の素材の一つであるマンガン酸リチウム(LMO)。その原料となる「電解二酸化マンガン」を日本で唯一生産する、この分野での世界最大手メーカーだ。
リチウムイオン電池の正極材の素材には、LMOのほかにニッケル、コバルトなどを含む「三元系」や「鉄系」のリン酸鉄リチウムなどがある。
目下、LMOはEV用リチウムイオン電池の正極材向け素材の本命とされている。実際には、電池設計に合わせて複数の素材を混合するケースが多いが、リーフ、アイミーブのほか、米ゼネラル・モーターズ(GM)が昨年発売したEV「ボルト」も、LMOを採用したもようだ。