観光競争力で初首位も、海外客再開に欠ける視点 忌避に偏見、受け入れ再開に反対の声が充満
ただ、観光産業が十分に成長し、「日本は観光立国だ」と胸を張れる状態になっているかというと、2019年の段階でも「まったく物足りない」というのが、率直な評価になるのではないでしょうか。
2019年の訪日外国人旅行者数は、過去最高となる3188万人でした。東日本大震災があった2011年を底に着実に増えてきましたが、世界最多のフランス8932万人はもちろん、アジアでも中国6573万人やタイ3992万人の後塵を拝しています。また、旅行市場に占めるインバウンド需要の割合は2割弱に過ぎません(2019年時点)。
先週5月24日、ダボス会議で有名な「世界経済フォーラム」が、観光地としてどれだけ魅力的か、世界各国の競争力を比較した調査結果を発表しました。日本は交通インフラの利便性や自然や文化の豊かさなどが評価され、総合順位で調査の開始以来、初めて世界1位になりました。日本は世界一の旅行市場になる潜在力がありながら、生かせていないのです。
地方経済は観光産業が頼みの側面も
もちろん、オーバーツーリズムの問題やSDGsの要請などがあり、単純に訪日外国人観光客を増やせばよいというわけではありません。観光産業や地域の持続性を確保しつつ、いかに観光を中心にした国づくりをしていくかが問われています。
著名な未来学者ジョン・ネイスビッツは、『Global Paradox』(1994、佐和隆光訳『大逆転潮流』)で、「21世紀に観光が最大の産業になる」と予測しました。
とりわけ日本では、戦後の経済成長を支えた基幹産業がすっかり衰退し、観光産業に対する期待が高まっています。金融産業のある東京と自動車産業のある愛知・静岡・埼玉などを除く多くの地域では、雇用吸収力の大きい観光産業に地域の命運がかかっていると言って過言ではありません。
政府も観光関連業者も、そしてわれわれ国民も、コロナ対策にとどまらず、国家百年の計で観光について考え、訪日外国人観光客の受け入れ再開に臨みたいものです。
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