日高市メガソーラー訴訟「地裁で却下」の重大背景 山の斜面の太陽光発電設備、土砂災害への懸念
事業者の訴えは、門前払いに
訴えを起こしたのは、太陽光発電事業を行う「TKMデベロップメント株式会社」(本社=東京・渋谷区)(以下、TKM社)と事業用地の地権者ら。2020年9月、「太陽光発電設備設置事業の権利確認等請求事件訴訟」を提起した。
日高市の「太陽光発電設備の適正な設置等に関する条例」とその施行規則は、森林保全区域、観光拠点区域などからなる特定保護区域と保護区域を指定し、事業者は届け出を行い、市長の同意を得なければならない。事業区域が特定保護区域または保護区域内にある場合には市長は同意しない、と条例は明記している。
訴状のほか、原告が裁判所に提出した書面によると、TKM社は日高市高麗本郷の約15ヘクタールの土地に総発電出力1万1298キロワットのメガソーラーの建設を計画し、2018年11月から地元説明会を始めた。9回目の地元説明会を終えた直後の2019年8月、日高市議会臨時会が開かれ、条例案を可決し、同日公布・施行となった。
TKM社が再生可能エネルギー特別措置法(再エネ特措法、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度を支える法律)に基づき認定を受けた事業の計画地は、太陽光発電事業が一律に禁止されている特定保護区域、保護区域内にある。このため、原告は「条例はTKM社が事業を実施できる法的地位・権利、憲法で保障された営業の自由などを侵害し、土地の所有者や地権者の財産権を侵害している」と主張。「市長の同意を得ずに認定を受けた発電事業を行うことができる」ことを確認する、という形で条例が「違憲であり、無効である」との裁判所の判断を求めた。
さいたま地裁第4民事部の倉澤守春裁判長は5月25日午後、「却下する」と判決を言い渡した。判決は、「当該事業を実際に実施するためには、再エネ特措法に基づく認定事業者であっても、(林地開発許可を定めた森林法など)関連法令の要件を満たす必要がある」としたうえで、TKM社がまだ林地開発許可を受けていない点などを指摘。「TKM社には本件事業を実施できる法的地位があるとは言えない」「判決により法的地位があると確認をすることが必要かつ適切であると考えることはできない」とした。
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