日高市メガソーラー訴訟「地裁で却下」の重大背景 山の斜面の太陽光発電設備、土砂災害への懸念

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そもそも、地域住民と事業者間の紛争多発は、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度とそれを支える再エネ特措法が急ごしらえだったこともあり、金儲けができればよいといういいかげんな太陽光発電事業者が跋扈したため、ともいえる。

自治体の動向の後を追い、国も検討始める

こうした事態に、政府は4月、経済産業、環境、国土交通、農水の4省が事務局を務める「再生可能エネルギー発電設備の適正な導入及び管理のあり方に関する検討会」を発足させ、法制度の改善を検討し始めた。

検討会に提出された資料によると、経済産業省は2016年には再エネ特措法改正(施行は2017年)を行って自治体条例を含む関係法令順守を認定基準として明確化し、違反した事業者に対する認定取り消しを可能にした。これまで条例に違反したことを理由に認定が取り消された例はない。

また、この法改正では認定事業者に対し、標識と柵塀の設置も義務づけた。台風や大雨など緊急時に連絡を取れるよう、また、適切な保守点検や維持管理を促すためだった。「標識が見当たらず、何かあったときに対応してくれるのか不安」という住民からの通報などにもとづく指導件数は、2021年度中に1052件にのぼり、うち395件はまだ改善が確認されていない。

豪雨時に山や丘の斜面の太陽光パネルが崩落する恐れは、2018年7月の西日本豪雨により一気に現実化した。兵庫県などで山陽新幹線沿いの斜面の太陽光パネルが落下したり、山の中腹から大量の太陽光パネルが崩落したりした。

同じような事故は続く。経済産業省によると、2021年4月~2022年2月までに起きた太陽光発電設備をめぐる事故は全国で計435件あり、大雨で土砂が流出したり、架台などが壊れたりした件数は計33件だった。

このため国の検討会では、「悪質な法令違反があった場合、認定時に決まる電力の買取価格が下がるなどの仕組みを作れないか」などの意見も委員から出ている。

太陽光発電設備の設置をめぐる現在の法制度が、多くの問題を含んでいることは明らかだ。4省庁による検討が、現実に起きている地域での紛争や混乱がなくなるような制度改善やより抜本的な制度の創設につながるのか。あるいは、小手先の制度の手直しで終わるのか、今はまだ見えない。

河野 博子 ジャーナリスト

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こうの ひろこ / Hiroko Kono

早稲田大学政治経済学部卒、アメリカ・コーネル大学で修士号(国際開発論)取得。1979年に読売新聞社に入り、社会部次長、ニューヨーク支局長を経て2005年から編集委員。2018年2月退社。地球環境戦略研究機関シニアフェロー。著書に『アメリカの原理主義』(集英社新書)、『里地里山エネルギー』(中公新書ラクレ)など。2021年4月から大正大学客員教授。

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